56歳夫が「若年性認知症」と診断されて失ったものと学んだこと

話題の書『明日はわが身』著者が明かす
週刊現代 プロフィール

本人は「まだ若いんだから自分でできる」と思っているのに、言葉や行動にうまく表せません。そのもどかしさがあるから、他人に介護されるなんて我慢ならない。男の沽券にかかわるのです。介護者が自分より年上ならばなおさらでしょう。

若いとはいえ女性ヘルパーも難しい。着替えで裸を見られたり、トイレの介助をされれば、羞恥心だって働きます。ようやく20~30代の男性ヘルパーさんとなら、うまくいくとわかりましたが、それでもプライドがあるから、「手を出すな!」と威嚇してしまう。みなさん、よく辛抱してくれたと思います。

自分で介護施設に通うデイサービスを決めるときも大変でした。若年性認知症の男性は施設に通い始めても「俺が家にいると、そんなに邪魔なのか!」などと奥さんに食ってかかり、大半が行くのをやめてしまう。

そこで、施設の所長さんに、ひと芝居打ってもらい、夫にデイサービスに就職してもらう、という設定にしました。

夫は仕事を辞めてからずっと「申し訳ない。また働きたい」と繰り返していたので、喜んで話に乗ってくれました。月末にはあらかじめ用意していた偽の給料袋を持って誇らしげな表情。そんな夫を見て、介護だって悲しいことばかりじゃない。夫に自信を持たせてあげることが大切なんだと実感しました。

介護を受けるか、介護をするか、それとも両方か。人生の中でどれかを必ず経験するのが現代社会です。

だからこそ、私のようにパニックに陥らないために、夫婦で話し合い、事前に十分な知識を身に付けておいてほしい。そして制度や人の手を借りながら、前を向いて介護生活を送ってほしい。そのお役に立てたらとこの本を書いたのです。

「週刊現代」2014年12月13日号より

明日はわが身