56歳夫が「若年性認知症」と診断されて失ったものと学んだこと

話題の書『明日はわが身』著者が明かす
週刊現代 プロフィール

甘美な誘い文句と楽園のような写真に、疲れ果てていた私は飛びつきました。二人で下見に行ったところ、

「フィリピンは物価が安く、24時間フルタイムでマンツーマンの介護士を雇用するのはたやすい。3ヵ月で効果が現れますよ」

と、その日本人に熱弁を振るわれ、なんの疑いも持たなかった。私は仕事の関係で同居できませんでしたが、この人なら任せられると熱い期待を寄せて夫を送り出したのです。

夫の様子は、介護ブログでチェックすることができました。今日は何をした、というエピソードと写真が掲載されているのを見ては、回復に向かっていると信じ込んで感謝感激。あれこれと諸費用を計120万円ほど追加請求されましたが、素直に支払いました。

不審を覚えたのは、1ヵ月が過ぎたころでしょうか。毎朝、テレビ電話で夫と話すのですが、その様子がブログと違うと感じるようになりました。生気がなく、失語も進んでいる。その日本人は、ちょっと風邪気味だとか、言い訳ばかり。

「やっぱり、おかしい!」

セブ島に駆けつけて待っていたのは、変わり果てた夫の姿でした。眼光は鋭く、言葉は失われ、異臭を放っている。リハビリどころか、食事や入浴さえ、まともなケアを受けていませんでした。すべて真っ赤な嘘だったのです。

人の弱みにつけ込む「介護詐欺」。まさか、自分がそんなものに引っ掛かるなんて……。

我が家が人並みの介護生活をスタートできるようになったのは、介護者の話を聞いてくれる方々に出会ってからでした。旦那さんの介護を経験した知人は「一人で抱えていてはダメ」と言ってくれた。

彼女が呼んでくれた介護福祉士さんに従って諸手続きをすると、認定は「要介護4」。介護保険制度の重いほうから2番目に当たり、とうてい妻が一人で介護できるレベルではなかったのです。病院での告知から、すでに2年8ヵ月が経っていました。

Photo by Pixabay

年上に介護される辛さ

デイサービスとヘルパーさんの助けを借りながら、夫は今も私と一緒に暮らしています。

とはいえ、ぴったりのヘルパーを見つけるのにずいぶん苦労しました。