収益1億ドル超え、ニュースアプリ開発、社長・発行人交代、新たな国際展開---米ニュースサイト「バズフィード」の2014年を振り返る

佐藤 慶一 プロフィール
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11月: 収益1億ドル超えを発表、エボラ出血熱やUberに関する報道

11月には、収益が1億ドルを突破した。そして月間2億訪問数と動画の閲覧数が月間7.5億回を同じ月に超えたら、社員に対してApple Watchが配布することも発表され、11月にはどちらの数字も達成した。1億ドルの収益を生み出しているのはネイティブ広告だが、その人材強化もおこなった。ADWEEKの記事によれば、ハフィントン・ポストでブランドコンテンツを手がける「HuffPost Partner Studio」の開設・運営やネイティブ広告事業を担当していたテスラ・グールド氏が移籍した。

ソーシャルメディアやモバイル流入が多いバズフィードだが、ニュースレターからのトラフィックは5番目あたりだということが、Poynterの記事で紹介されている。カテゴリーや受け取る頻度が違う15種類のニュースレターを用意して、さまざまな層に対するニーズを満たそうとしている。ニュースレターの編集担当によれば、2013年から2014年にかけてトラフィックが700%増加したことも強調したい。

データ関連では「How Technology Is Changing Media」というソーシャル、モバイル、動画などについてのページを公開した。ページのインフォグラフィックを見ると、米国のミレニアル世代の半数がバズフィードを読むこと、ミレニアル世代は1日5時間以上スマホを利用すること、月間動画視聴回数がこの1年で8倍以上になったこと、ミレニアル世代に絞るとテレビ以上のリーチをもつことなど、バズフィードはもちろん、メディア環境の変化を理解できる。

この月は珍しく、硬派なニュースやスクープも見られた。まずは中間選挙の際にはフェイスブックと提携。同社の感情データをもとに「The Facebook Election」という記事を公開し、フェイスブックがテレビに取って代わり、ポピュリズムの新たな扉を開いたとしている。記事内では円グラフを用いて、各党の政治家に対するポジティブ/ネガティブな割合を明らかにした。

フェイスブックは過去にニュースフィードのアルゴリズム操作をおこない、表示される投稿の感情がユーザーの投稿の感情に影響するかどうかを実験したことが問題となったこともある。このときは情動感染することがわかっているため、選挙や政治とソーシャルネットワークは切っても切れない関係になっていくのだろう。

選挙のほかには、エボラ出血熱が拡大していたリベリアに記者を送り、継続的な報道をおこなった。このあたりから、海外の特派員数を増やすことで世界のニュースをカバーできる体制をつくっている。拡散力のあるメディアだからこそ、力のある記者がなかなか報道されないトピックについて、現地取材をもとに丁寧に伝えていくことが重要だと感じる。

エボラ関連報道に注力していた一方で、のちにWHO(世界保健機関)のブラックリスト入りしていたことも報道された。WHO広報によれば、ナイロビで人権やアフリカのトピックを報道する記者の不正確な報道をめぐって衝突があり、彼女については拒絶するものの、バズフィードというメディア全体をブラックリストに入れているということではないという。

国内においても話題となる報道があった。配車サービス「Uber」のメディア批判への批判をめぐり、同社が個人の乗車情報を一部閲覧していることを報じたのだ。バズフィードの女性記者もメールのやりとりをおこなうなかで、Uberの担当者が記者のプライベートデータにアクセスしていたことも明らかになった。

また、Uberのエミール・マイケル上級副社長が批判的な記事を書いた別のメディアの女性記者を名指しのうえ、乗車情報を見ることでプライベートを晒すことができると発言したことは波紋を呼んだ。これらを大々的に報じることで、報道メディアとしての側面も見えた出来事だった。

12月: ライター・編集者・PRなど人材獲得

12月は大きな動きはなかったが、人材獲得ラッシュだった。

まず、政治メディア「ThinkProgress」のシニアエディターだったアニー・ローズ・ストラッサー氏がニュース部門に加入。さらには、バズフィードの後追いサイトのひとつである、政治風刺メディア「The Onion」が運営するバイラルメディア「Clickhole」の編集委員を採用し、もともとの強みであるバイラルコンテンツ作成を強化。イギリス版ではテレグラフ紙のアシスタントコメントエディターを獲得。イギリスにおけるニュースのカバー領域を増やすことが狙いだ。

また、サンフランシスコ支局長にWIRED紙のシニアスタッフライターのマット・ホーナン氏が就任。同氏は、過去にWIREDのほか、ギズモードのシニアレポーター、Macworld誌でのアシスタントエディターなどテクノロジーとカルチャーの交わるところを追い続けている。ちなみに米国にはこのほかワシントンD.C.やロサンゼルスに支局がある。

このようなライターの獲得に加え、PRでも新たな人材を獲得した。フェイスブックのコミュニケーション担当役員だったリズ・ワズデン氏をPRのトップとした。これまでも伝統メディアや大企業からの人材獲得をおこなってきたが、引き続きどのような才能や経験を求めているのか注目したい。

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以上、バズフィードの2014年の動向を振り返った。各月の取り組みや戦略の一部を拾っていくことで、これからのメディアやジャーナリズムに求められる要素も少し浮かび上がる。バズフィードではさまざまな情報がさまざまなフォーマットで発信されているが、さまざまな関心の読者が集まる一方で、誰かにとっては大量のノイズを生んでいる側面もあるだろう。ただ、そんなノイズがあり、かつ、実験的なコンテンツの表現・制作・流通を考え抜いているからこそ、メディアとして読者に新しい興味・関心を接続していく力をもつのだと思う。

2015年は、日本版も含めたさらなる国際展開、ニュースアプリの公開、ウェブを超えたテレビや映画など既存のエンターテイメント企業との提携、メッセージアプリを通じたコンテンツ発信、そして調査報道チームによる国内・国際ニュースのカバーなど期待されることを挙げればキリがない。細かな動きも注視していくことで、メディアの未来像を考えるきっかけにしたい。