収益1億ドル超え、ニュースアプリ開発、社長・発行人交代、新たな国際展開---米ニュースサイト「バズフィード」の2014年を振り返る

佐藤 慶一 プロフィール

8月: 新代表が就任、5000万ドル調達、ゲーム部門を新設

8月には新社長が決定。就任したグレッグ・コールマン氏はヤフーを経て、AOLに売却前のハフィントンポストの広告事業を成長させた人物で、その後、ネット広告代理店クリテオを創業したアドテク系のエキスパート。広告に一層力を入れていく動きだろう。

ゴーカーメディアは、4000本もの過去記事を削除していたことを報道。「編集基準(editorial standards)に見合わなくなったから」としているが、先月の剽窃を受けているのか、スタイルガイドと照らし合わせているのか。ちゃんとしたメディア企業として生まれ変わるためなのだろうか。

8月にはシリコンバレーのベンチャーキャピタル、アンドリーセン・ホロウィッツから5,000万ドル(約60億円)の資金調達があった(これまでの累計で1億ドルを調達している)。このときの評価額は8.5億ドル。これを受け、すでに存在するバズフィードのアプリとは違うニュースアプリ開発に注力するとされた。

資金調達と同時に、動画部門「BuzzFeed Motion Pictures」とゲーム部門など新しい部門の新設も発表。後者については、Capital New YorkTechCrunchなどが報じており、インタラクティブなクイズコンテンツに続き、ウェブとモバイルでゲーム提供を目指し、ブランドとのコラボレーションで新しい一歩を踏み出す。

「BuzzFeed Distributed」という流通部門も設置され、バズフィードのサイト外(Off BuzzFeed)でのコンテンツ流通にも本格的に取り組むようになった。具体的には、TumblrやImgur、 Instagram、Snapchat、Vine、そしてWhatsAppなどのプラットフォームやメッセージアプリなどだ。

9月: グロースハックやビジネスニュースが注目される

INC.はデータ&グロース担当のダオ・グエン氏への取材記事を掲載した。自身でもメディア企業を経営した経験をもち、夫とフランスに引っ越したあとは同国の新聞社、ル・モンドの子会社CEOとしてデジタル化を推進。ダウ・ジョーンズ・ベンチャーズにてディレクター経験を経て、2012年10月にバズフィードに移籍した。

2013年夏に10名ほどのデータサイエンスチームを率いており、参画して2年で月間訪問数は2800万から1.5億へと5倍の成長を記録。ウェブメディアでトラフィックが落ちる週末についてもデータと照らし合わせることで、打ち出す記事を変え、200%以上を記録することもあったという。モバイルからのトラフィックを増やすのにピンタレストやメール(ニュースレター)に注力するのも海外ならではの施策だ。

テックメディアのRe/codeはバズフィードのビジネスニュースを増やす動きを報道。2013年から元ロイター通信のピーター・ローリー氏を引き入れ、ビジネスニュースもカバーするようになったことはあまり知られていない。既存の(ライトな記事が好きな)読者とビジネスニュースがきっかけに読者をできるだけ重なる記事を出していくことを目標としているという。企業に関するニュースは既存メディアが強みをもつ領域のため、人材獲得と新しい伝達表現でどこまでいけるのかが注目される。

また、ベン・スミス編集長はガーディアン紙に寄稿している。ソーシャルウェブにおいて読者はタイムラインなどで見つけた記事を読んでいるため、新聞で言うところの1面が機能せず、情報がパッケージできずバラバラになっていること(アンバンドル化の進行)などに言及。パッケージが機能していた紙メディアでは一貫した世界観を提示できていたがいまでは難しくなった状況にあるなか、スミス氏は「バンドル(パッケージ)を取り戻すことができるか? そして、そうすべきなのか?」という問いを投げて締めている。

自社のデータブログでは、人々は記事を読まずにシェアしているのか、読んでからシェアしているのかどうか、という気になるポイントを紹介。CEOのペレッティ氏がツイートしているように、バズフィードの約7000本の記事でデータをとってみたところ、じっくり読んでいる(滞在時間が長い)読者ほどシェアしていることがわかったという。

具体的にはシェアする読者のほうが68%滞在時間が長いこと、モバイルではその数字が80%となることなど顕著な結果となった。ブログには図表がいくつか掲載されている。記事を読むこととシェアの関係が気になる方は読んでみてほしい。

動画キュレーションサイトのアップワーシーも自社調査において、「コンテンツを4分の1程度しか読まずにシェアする人は多いが、読了してからシェアする人のほうがより多い」との結果を発表している。一方、リアルタイムのデータ解析を提供する企業のチャートビートは真逆の結果となった調査を発表。ツイッターにおけるシェアにかぎったものではあるが、ある記事をじっくり読んだ人とその記事をツイートした人には相関関係がないとした。詳細はThe Vergeの記事を参照されたい。

10月: 発行人交代、データエンジニアリング強化

2014年を通してかなり大きな話題のひとつとなったのは発行人が交代したことだろう。先述のグロースハッカーのダオ・グエン氏が抜擢されたことも話題を広げた要因だ。CEOペレッティ氏が社員向けのメモで明らかにしたのだが、そこでは「new type of Publisher(新しいタイプの発行人)」と表現している。

さらには、情報を一般公開できるようにすることを「パブリッシュ」とするならば、既存メディアの発行人とは違い、編集でもビジネスでもなくテクノロジーとデータサイエンスがメディアの成功に重要となるため、グエン氏が発行人になることがベストだとしている。

また、ジャーナリズム業界への貢献する取り組みも始めた。BuzzFeed Newsとジャーナリズムの名門であるコロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールが共同で、調査報道のフェローシップを開始。アメリカのメディア機関にはマイノリティの人材が少ないことから、多様なバックグラウンドをもつジャーナリストにチャンスを与えることを目的に掲げる。合格者には8.5万ドルが与えられ、取材にかかる経費なども支給されるという年間プログラムだ。

まったく角度の異なるものでは、バズフィードがソーシャルメディア向けのURLをつくっているとDigidayが記事にしている(Digidayのこの記事でも実践している)。以前はタイトルの言葉から自動生成されるものだったが、長すぎたり、タイトル変更した際にも対応できるように、CMSでURLをカスタマイズできるようにしたという。遊び心のあるもの、感情の要素を取り入れたもの、週刊誌的なものまでいくつか使い方があるようだ。タイトルとサムネイルだけで気を抜かずにURLまでしっかり考えていること、検索向けではなくソーシャルメディア向けのURL戦略をとっていることに感心する。

10月末には、リアルタイムデータシステムを開発・提供するスタートアップ「Torando Labs」の買収もあった。テッククランチなどの記事にくわしいが、URL短縮サービス「bit.ly」の共同創業者であり、同社CEOのトッド・レヴィ氏に加え、CTOらも参画。バズフィードではすでに10名ほどのデータサイエンスチームは存在するものの、この買収を通じて優秀な人材獲得をおこない、データエンジニアリングを強化することになる。