収益1億ドル超え、ニュースアプリ開発、社長・発行人交代、新たな国際展開---米ニュースサイト「バズフィード」の2014年を振り返る

佐藤 慶一 プロフィール
バズフィードのクイズコンテンツ「How Would You Die In "Game Of Thrones"?」より

4月: ピューリッツァー賞受賞記者の移籍、テレビ局との提携

Digidayはバズフィードのクイズについて興味深いデータを伝えている。読者の96%がスポンサードされたクイズを最後まで終えているというもの。バズフィードでは、この時点では1日平均7.8個のクイズコンテンツを公開している。米国大手ケーブルTV局「HBO」が手がけるドラマに関するスポンサードポストもおこなわれている。ほかにも「What State Do You Actually Belong In?」は4000万PVを超えるなど驚異的な数字を誇る。クイズというフォーマットがユーザーをコンテンツに留めつづけることで、ブランド認知の向上にもつながっていくのだろう。

人材面での話題もあった。元ガーディアンの編集者ルイス・ハミロス氏をイギリスの外信部に抜擢した動向などについてjournalism.co.ukなどが伝えた。イギリスなど海外展開は読者マーケットを拡大するだけでなく、「BuzzFeed World」のコンテンツの拡充も意味する。2013年夏にこのカテゴリーを開設以来、中東やエジプト、ウクライナ、シリア、ブラジル、アルゼンチンなどさまざまな地域に特派員を配置している。

また、2014年のピューリッツァー賞で調査報道部門を受賞したクリス・ハンビー氏が非営利団体「The Center for Public Integrity」から移籍。彼は炭鉱労働者たちが長期間にわたり粉塵を吸い込んだことでかかった炭塵肺について、弁護士や医者らが鉱夫たちの給付金に対する支払いを拒否するように不正を働いていたことを報道し続け、同団体初のピューリッツァー賞を獲得した。この人材獲得により、調査報道チームの強化を狙った。

BuzzFeed Social Tune In Program」という新プログラムを発表し、BravoとIFCといったテレビ局と提携したのも4月。IFCとの取り組みでは「BuzzFeed Block」という映画紹介番組をつくり、そこで紹介するコンテンツなどをリスト記事としてバズフィードのページにも掲載するコラボレーションを実現した。番組放送日の土曜日には、バズフィードの記事のおかげもあり、18~49歳の視聴率が16%上がったことも紹介されている。テレビにも影響を与えるようになり、広告面でも新たな展開を迎えそうだ。

Capital New Yorkはバズフィードのアイデアエディターにインタビューを実施。当時はカテゴリーができて4ヵ月が経ったばかりで、論評や風刺を掲載しながら、さまざまなアイデアに触れることができる場所となっている。加えて、ミレニアル世代が好きなトピックとして、人種・性別などがあるという。バズフィードはLGBTカテゴリーもあり(専属のエディターもいる)、リベラル寄りだと思われる。編集長の「バズフィードの一面はTwitterだ」という発言や、読者が気にかけていることを記事として出していく姿勢も興味深い。

5月: 社長兼COO退任、CEOへのロングインタビュー

Search Engine Watchがバズフィードのモバイルとソーシャルにおける急成長を3つのグラフを用いて取り上げている。2013年から2014年の1年で米国における読者が2000万人から7000万人になったこと、モバイル流入のうちモバイルが58%、アプリが42%ということ、アプリ経由の読者のほうがモバイル読者より24倍もの時間を使ってくれることなどが紹介されている。

5月には、社長兼COOを務めていたジョン・スタインバーグ氏退任もあった。バズフィードにも投資していたLerer Venturesで投資家としてのキャリアを進み、バズフィードに対してはアドバイザーというかたちで接点をもつ。

メディアやジャーナリズムに関するトピックを追うPoynterの記事では、バズフィードがどれだけネコの記事を掲載してきたのかについて伝えている。この時点ですでにネコに関する記事を22500本も掲載しており、ソーシャルメディア上で拡散させる戦略でもあるのだろうが、その数がすごいことがわかる。

また、ミディアム上のメディア「MATTER」がCEOペレッティ氏のロングインタビューを掲載している。8章立てでかなりのボリュームをかけて、既存メディアについて、ハフィントン・ポストやバズフィードに関するストーリー、これからについても語っている。国際展開と動画、モバイルアプリ、ほかのメディア(ヴァイスやヴォックスなど)についても触れており、このインタビューを読むだけでバズフィードやペレッティ氏についてかなりの情報を知ることができる。

6月: 前社長兼COOの移籍、2億ドルの資金調達のうわさ

6月には、ベンチャーキャピタルへの移籍を果たした前社長のスタインバーグ氏が、英デイリー・メールのアメリカ版を運営する「Daily Mail North America」のCEOとなったことが発表された。デイリーメールのアメリカにおけるビジネス推進に向け、バズフィードの初期からネイティブ広告で売上を立てた手腕が買われたと見られる。

また、VentureBeatは関係筋からの情報をもとにバズフィードが2億ドルの資金調達に動いていると報道。バズフィード側からもコメントがないため、これは事実と違っていたが、8月には資金調達が発表されることになった。

7月: 記事フォーマット開発、記者による剽窃発覚

バズフィードではクイズが人気コンテンツだと先述したが、関連して立ち上げ2年ほどのイスラエル発の「PlayBuzz」というサイトが話題となったのもこのころ。クイズコンテンツ、そして読者もコンテンツ制作できるCGM型のモデルで急成長しており、いまではフェイスブックのシェアなどではバズフィードを超え、世界でいちばんシェアされるサイトになっている。

フォーブスはバズフィードがピンタレストを活用しており、フェイスブックに次ぐ流入元となっていることを紹介。とくにユーモア関連の投稿と相性が良いという。The Drumでは広告担当に話を聞いている。7割がソーシャルメディア経由、半数がモバイル経由という象徴的な割合のなかで、ブランドのスポンサードポストにもユーモアがカギと発言。フォルクスワーゲンのスポンサードポストである「‘What’s your inner dog breed?’」のようにアイデンティティを問うようなものを好例として挙げている。動画についても半数がモバイル経由で、月間7500万回の閲覧数を記録。引き続き、動画についても編集とコマーシャルの双方に重点的に投資していくとしている。

既存のメディアとの違いについては、伝統メディアは95%の時間をなにを伝えるかに使っていて、残り5%をどのように、どこに言うのかなどを考えている一方で、バズフィードでは50%をコンテンツのことに、残り50%をどのようにすればソーシャルメディアでの流通を担保できるシェアされるのかを考えているとわかりやすく説明している。

Poynterはバズフィードが簡単になにかを比較できるスライドを活用した記事を出していることを取り上げた。たとえば、「34 Celebrities Who Share The Same Face」という記事では、似ている著名人を比べており、200万PV以上を誇る。このように、記事フォーマットの開発をおこない、新しい見せ方を追求していることにも注目したい。

2015年には中東でもサイトを開設するのではないかと報道されたのもこの時期。国際担当がgulfnewsに伝えたところによれば、中東にはバズフィードのようなサイトがないため興味をもっている地域の2つのうちのひとつとしている。もうひとつの地域については東南アジアを挙げている。

調査報道チームにも新たな人材が加わった。調査報道機関「The Center for Investigative Reporting」に在籍していたデータジャーナリストのケンダル・タガート氏だ。また、硬派な面としては、LGBTに関する法律やゲイの権利キャンペーンなどを専門に追っていたクリス・ガイドナー氏がThe National Lesbian & Gay Journalists Associationの「2014 Journalist of the Year」を受賞するなど、ジャーナリズムの領域でも評価を受け始めている。

いい話題もあれば、悪い話題もある。バズフィード記者による剽窃が発覚したのも7月。政治ニュースの編集者をしていたベニー・ジョンソン氏による、引用の範疇を超えた41件の剽窃が明るみになり、バズフィードを去ることになった(現在はNational Review誌にてデジタル・ディレクターを務めている)。