収益1億ドル超え、ニュースアプリ開発、社長・発行人交代、新たな国際展開---米ニュースサイト「バズフィード」の2014年を振り返る

佐藤 慶一 プロフィール
共同創業者兼CEOのジョナ・ペレッティ氏 〔PHOTO〕gettyimages

1月: データサイエンティストの活躍、オーストラリア版公開

2014年1月はじめに、アメリカン・ジャーナリズム・レビューが「BuzzFeed’s Secret Weapon: Ky Harlin」という記事でバズフィードのデータサイエンティストに焦点を当てている。いつ、なぜ、ある記事がバイラルするのか。1日に100本以上の記事がアップされるなか、データサイエンスのチームではA/Bテストをはじめとするデータ分析を駆使して、ソーシャルメディア上での口コミの広がりを科学する。

取り上げられたデータサイエンティストはもともと医療画像関連のスタートアップからメディア企業へと移籍したという経歴をもち、膨大なデータを分析していくことは医療画像を扱っていた経験も生きているのだという。データサイエンスチームのおかげもあり、メディア分析企業NewsWhipのデータによれば、いまでは世界中のウェブメディアのなかでフェイスブックのシェア数が3番目に多く、625万シェアという結果が出ている(1位だった時期もある)。

また、朝のテレビ番組「CBS THIS MORNING」と提携したインタビューシリーズ「BuzzFeed Brews」を開始し、テレビ、ウェブ、イベントなどさまざまな場を活用して政治に関するインタビューをおこなうようになった。ゲストのブッキングから編集、マーケティング、プロモーションなどに協力し、Livestreamなどのライブ配信サイトを通じてその様子を届け、インタビューの内容を抽出したものはCBS THIS MORNINGやCBSNewsでもニュースとして扱われるというテレビ番組とのコラボレーションも生まれ始めた。

このほかにも、ワシントン・ポストは「41 times Buzzfeed told us who we are」という記事でバズフィードの記事の特徴を紹介。バズフィードが「クイズ」と呼ぶコンテンツのなかでも特に診断系のものが多いことをバズフィードお得意のリスト記事で取り上げている。

1月末にはオーストラリア版がリリースされ、イギリスに続いてさらに英語圏に進出。オーストラリア放送協会は、バズフィード国際担当のスコット・ラム氏のインタビューをおこなっている。同氏は、ネコ画像のリスト記事やおもしろ動画などのイメージが先行していてジャーナリズムと言えない状態について、オリジナルコンテンツをつくってこなかったからだと説明。もともと「BuzzFeed Labs」という実験的なサイトからはじまったため、ネット上の流行ネタが口コミで広がるかどうかの実験のなごりがあるとしている。またタイトルよりシェアされることが重要とも語っている。

2月: 調査報道チームづくり、スタイルガイド策定

2月に入ると、テッククランチが「BuzzFeed Is The Future(Whether It Lives Or Dies)」という記事を掲載。BBCやCNN、FOXなど大手メディアのデータと比較してもバズフィードのシェア数の多さが目立つことを紹介しながらも、新しいメディアのソーシャルメディア流入は浮き沈みがあると紹介している。それでもなお、GIF画像のリスト記事から国際ニュースや動画まで展開するバズフィードがこのまま伸びるのであれば「新時代の巨大メディア」を目にすることだろう、と評価。

USAトゥデイでは、調査報道チームについて取り上げている。2011年にポリティコから現編集長のベン・スミス氏が移籍し、2012年にはバズフィードとしてはじめて米国大統領選挙を報道。その後、2013年10月にピューリツァー賞受賞経験を持つ調査報道メディア「プロパブリカ」のマーク・スクーフス氏が移籍し、調査報道に向けたチームづくりに踏み出した。

2014年1月にはロサンゼルス・タイムズからケン・ベンシンガー氏、インディアナポリス・スターからファルタ・べディアン氏が移籍。2月にはNBCニュースでエミー賞を数度獲得したジャーナリスト、 アラム・ロストン氏の参画を発表した。海外展開に合わせ、海外在住の特派員も多く採用するようになったのもこのころで、月間訪問数は約1億だったと伝えている。

また、バズフィード独自の「スタイルガイド」を策定したのも2月。表記の統一や体裁をととのえることで、新興メディアがジャーナリズム(機関)へと向かう姿勢として大きな出来事だと話題になった。用語表記(たとえば、「!?」ではなく「?!」とすることなど)や訂正の仕方、インタビュー記事における記事スタイル、音楽やLGBTに関する項目まである。アメリカ版だけでなく、イギリス版のスタイルガイドもすでに存在する。

1月に続き、今度はフォーチュンが国際担当のスコット・ラム氏にインタビューをおこなっている。各国に展開するなかで、元ガーディアン記者のミリアム・エルダー氏がハブとなっているのだという。フランス語、スペイン語、ポルトガル語の翻訳については語学学習アプリ「Duolingo」と提携しながらの展開をおこなっている。

インタビュー時の翻訳にかかわる体制は、ニューヨークにフランス版とスペイン版を運営するための2名の編集者と、各国にライターがいるというもの。テキストが少ないことや、言語の違いをあまり問わないことから、画像やGIFなどのリスト記事を積極的に翻訳しているなどグローバル展開の戦略も興味深い。

3月: 新たな国際展開の発表、アプリ改善に向け人材獲得

3月、CEOのペレッティ氏がミディアム上で公開した投稿が話題を呼んだ。そこでは新たなグローバル展開が記されていたからだ。ドイツ、日本、インド、メキシコで展開するとのことを明らかにし、現在までにドイツ、インドではサイトが開設されている。

その後、ドイツのニュースサイト「VentureVillage」がペレッティ氏へのインタビュー記事をアップしている。冒頭では、情報収集をおもにツイッターやフェイスブックでおこなっていることや、TIME誌がもともとジャーナリストを擁しておらず新聞・雑誌のクリッピング(現代で言うところのキュレーション)からはじまり、その後自社で記者や特派員を雇うようになった変遷を話している。「(TIME誌が)数十年間かけて進化しているということがポイント」と発言。

バズフィードも当初はウェブ上の話題をまとめていただけだったが、いまでは調査報道チームや特派員を抱え、シリアやウクライナ、エジプトなど紛争地域における報道も現地からおこなえるようになった。1年前には手をつけていなかった動画にも本格的に力を入れ始め、このときですでに月間1億回の閲覧数を記録。トラフィックも4000万訪問数から、1.4億訪問数へと拡大したと語っている。

ドイツ版開設にあたっては、ドイツ最大の新聞社であるアクセル・シュプリンガーとは話し合いの場をもったというが、提携については否定。自社で運営するとの発言もしている。このあたりは海外展開にあたり、現地メディアとも積極的に提携・運営しているハフィントン・ポストとは対照的だ。

デジタルマーケティング媒体「AdAge」では、バズフィードの動画カテゴリーやチャンネルがわずか15ヵ月でマーケターたちによく知られていると紹介。動画部門のゼネラルマネージャーを務めるジョナサン・ペレルマン氏に動画のブランド広告獲得への戦略などを聞いている。ペットフードを販売するピュリナの動画広告は公開から5ヵ月程度で420万回再生、10万シェアを獲得。関連して、バズフィードの動画閲覧の6割はモバイル経由というもの興味深いデータだ。

3月には新たに人材獲得もおこなった。ヴァイスプレジデント兼モバイルエンジニアリング担当としてリャン・ジョンソン氏を採用し、アプリのブラッシュアップに乗り出した。当時、バズフィードへの流入のうち7割がモバイルとなっていたが、アプリの利用者は140万人程度でトラフィックの3%ほど。そのため、改めてアプリ開発に着手したとみられる。