第5回ゲスト:北方謙三さん (後編)
「シマジさんはまず、自分の価値観とは正反対の世界を書いてみることです」

島地 勝彦 プロフィール

恋愛も写真も、相手を通して自分自身を見る行為

日野 ここで、北方先生のリアル人生相談が聞けるとは思いませんでした。

島地 「Hot-Dog PRESS」の人生相談「試みの地平線」は「ソープに行け!」の名台詞で有名になったけど、あれは相当長く続いたよね。

北方 16年ですね。

助手 なんで「ソープへ行け」なんですか?

北方 君の世代は「Hot-Dog PRESS」なんて知らないか。若い男からの相談で、「友達関係を壊すのが怖くて告白できない」というのがあってね、それに対する答えが「ソープに行け!」。ひとりでうじうじ考えてないで、何人か経験した上で、その女を押し倒せ、と。

当時は今の草食系とは違う意味で軟弱な男が多くて、ちょっとカツを入れるつもりだったんだけど、その言葉だけが独り歩きしちゃって・・・。いつだったか街を歩いていたら、見知らぬ男に「ソープの人ですよね、いつも読んでます!」って握手を求められたこともあったなあ。

島地 ソープの人! まあ、その通りではあるけど。

北方 君は写真家志望なんだろう?

助手 はい。

北方 写真も恋愛と同じなんだぞ。恋愛というのは相手を通して実は自分自身を見ている。写真も被写体を通して自分の内面にある何ものかをえぐり出す。それが本物の写真家の自己表現でしょう。

島地 今はカメラの性能がいいから、シャッターを押せば誰でもそれなりの写真は撮れる。でも、まったく同じ条件で撮っても、写真家の内面が感じられる写真はどこか違うよね。たしかにその通りだと思うな。