ニュートン、ダーウィンをはじめ、世界が認める理系の功績を生み出してきたケンブリッジの研究環境

オックスブリッジの社会的意義Ⅰ
オックスブリッジ卒業生100人委員会

世界が注目する、斬新なアイデアが生まれる理由

なぜこんなにも多岐にわたる分野で斬新な成果があがるのか。その理由として、盛んな異分野の人材交流や身近なところで競争が生まれやすい環境があると考えられている。

前回までで触れられているように、オックスフォード・ケンブリッジは各学部とカレッジで構成されている。学生や教員は、原則的に学部とカレッジの両方に所属する。カレッジと学部は自治が別であり、異なった分野や身分の人々が必然的に同じコミュニティ内に所属する環境が整っている。両大学共にコンパクトな大学町で、学内の施設はほぼ徒歩圏内であり、自然と会話や情報交換をする環境が整っている。

また、この制度は競争が自然と生まれる環境でもある。学生の成績から年間のワインの予算まで、学内のいたるところにカレッジ間のランキングが存在する。ランキングが下位だからといって、何があるというわけでもなさそうだが、関係者は多少なりとも序列を気にしている印象を受ける。これによりカレッジ自体にも暗に序列が存在し、人気・不人気も分かれている。

この異分野の交流が盛んで、自由な中に、さらに競争も存在する環境が、斬新なアイディアを生み出すきっかけとなっているのではないか。また、こうした環境が、世界中から人材を集める要因につながっているのではないだろうか。

この異文化交流が斬新な発見を次々に生み出した根拠として、少々手狭であったキャベンディッシュ研究所が、広い敷地を求め、これまで他のカレッジやパブまで数十メートルから数百メートルであったケンブリッジの町の中心から、徒歩圏というには少し抵抗がある約2キロほど離れた町の西側へ移転した後、キャベンディッシュ研究所からは40年程ほぼノーベル賞が出ていないという「低迷した」状態が続いている。このことがパブなどでの異分野の人々との積極的な交流が、斬新で自由な発想の根源となっていた根拠として扱われることもある。

近年、このケンブリッジ自体が「低迷」した状況を打開すべく、キャベンディッシュ研究所の周辺に、マイクロソフトのビルゲイツ氏の名前を冠するウィリアムゲイツセンターや、材料科学、医療物理、フォトニクスなどの研究拠点を全て徒歩圏内に移設・新設し、自然科学系の人材の交流の向上を測っている。研究施設以外にも起業やスピンオフを専門とした施設や、一般企業の研究所なども隣接している。他分野にわたるセミナーも毎日のように開催される。

キャベンディッシュ研究所自身も時代の流れに乗って、卒業生が経営するWinton Capital Managementから数十億円相当の寄付を受け、持続可能エネルギー関連の研究のプログラムであるThe Winton Programme for the Physics of Sustainabilityを設置した。プログラムの一環で、大規模な産学連携センターの建設(2015年完成予定)を行ったりと、勢力的に「低迷」からの脱出を試みようとしている。研究内容や設備に直接する投資の他にも、2014年には女性が働きやすい研究所調査でケンブリッジ大学で唯一の金賞(Athena Swan Gold Medal)を受賞し、労働環境の整備など、制度の面でも先駆けている。

以上のように、オックスブリッジの社会的意義として、世に送り出された作品や発見、技術のみならず、その存在自体が、物事に取り組む際のライバルの必要性や、異分野・異文化の交流の重要性を顕著に表した例として挙げられるのではないだろうか。近年では、時代の流れに合わせ、新分野の開拓や産学連携により力をいれ、研究と実践の両面から社会へ貢献しようと、「オックスブリッジの流儀」にも新たな流れを組み入れようとしている。

両校共に総合的に見て研究力や教育力による社会への貢献度は世界的に優れているが、特にケンブリッジ大学の強みは自然科学の研究力であるのに対し、オックスフォード大学の真の強みは研究よりも、政界人輩出数であるといわれている。次週は、そのオックスフォードの強みを中心にお届けする。

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                                                    オックスブリッジ100人委員会より