【沿線革命001】
東京の鉄道新路線・新駅は五輪までにこう進化する

阿部等(交通コンサルタント)
阿部 等

鉄道はイノベーションの宝庫

「交通イノベーション」と言った場合、読者の皆様はどういったことを思い浮かべるだろうか。おそらく、電気自動車や水素自動車の普及によるエコの推進、ITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)による安全向上や渋滞解消といったことではないだろうか。東京都の舛添知事は水素自動車の普及を目指している。

一方、自動車や道路に対して鉄道に関するイノベーションと言うと、品川-名古屋を40分で結ぶリニア中央新幹線以外に、日々使っている都市鉄道や新幹線に関しては思い浮かぶことはあまりないだろう。鉄道は枯れた技術で、できることはやり尽くした、創意工夫の余地はない、2020東京五輪が決まったとは言え、鉄道整備は長い年月を要しもはや間に合わない、というのが普通の見方だろう。

それに対して本コラムでは、鉄道は実は創意工夫の余地が膨大で、効果的かつ実現可能な技術開発や規制改革のネタも大量にあり、イノベーションの宝庫だということを、新駅・新路線などの計画や構想のご紹介とともに伝えたい。

そして、鉄道イノベーションにより、今よりはるかに効率的に運行でき、便利に移動できるようになる。自動車に頼らざるを得なかった人の移動や物の運搬の相当部分を鉄道へシフトできる。

できもしない夢物語を語るわけではない。知恵と熱意を投ずれば技術的にも財務的にも実現可能な具体的な提案を順々に紹介する。具体的な路線に適用した場合に、今と比べてどれだけ便利になるのかを示していく。

その路線の沿線に住んでいるあるいは通っている、また沿線への居住・就職・進学を考えている方にとっては、「莫大なコストを掛けずに、こんなに便利にする方法が実はあるの?」と驚くような提案を紹介していきたい。

鉄道の持つポテンシャル

最初に、鉄道の持つポテンシャルをお示しする。国交省のホームページにある『まちづくりと一体となったLRT導入計画ガイダンス』の第1章の4ページにLRT(Light Rail Transit:次世代型路面電車)を中心としたまちづくりで有名なストラスブール市資料として、以下の写真が掲載されている。ちなみに、(株)ライトレールの社名とドメインLRT.co.jpはLRTに基づいている。

同じ人数を運ぶ場合の、自家用車、バス、LRTの道路占有イメージ(国交省資料より)

同じ人数を自動車・路線バス・LRTのそれぞれで運ぶ場面を想定したイメージ比較で、必要な空間面積が大きく異なると直感的に分かる。

少し想像力を働かせれば、必要な運搬具の台数も、運転者の人数も、さらには、エネルギー消費も環境負荷も大きく異なることが分かる。単車または短編成のLRTでさえ自動車に勝るこれだけの能力を持つのだから、長編成の鉄道の能力の高さは説明するまでもない。

東京駅から50km圏の人口は3,000万人、鉄道の路線長2,500km(複線換算)、利用者4,000万人/日(片道当り1と計数)である。東京が世界一の鉄道先進地域であり、世界最大の人口が平和で豊かに暮らせているのは鉄道のおかげであることを示す。

一方、20世紀型の自動車社会の理想郷を追求し、片側4~5車線のハイウェイ網を持つロサンゼルス都市圏は、土地の1/3が道路、1/3が駐車場で、人々の活動領域は残り1/3のみである。

それでも、渋滞と駐車場不足に難渋し大気汚染も深刻で、人口は1,000万人と東京圏の1/3に過ぎない。東京とロサンゼルスのどちらが、これからの時代に相応しい都市構造・交通体系であるかは説明するまでもない。

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