優秀な人こそ社内で孤立する!? 「脱派閥が正義」と考えることの危険性

『社内政治の教科書』第5回
高城 幸司

「派閥の存在」を認めて、それを活用する

派閥をつくるのは人間の本質---。

これは、松下幸之助さんの言葉です。ご著作である『指導者の条件』(PHPビジネス新書)から、少し長くなりますが引用しましょう。

「たしかに、人間の集まるところ、大小の別はあっても、必ずグループ、党派があるといっていい。そういうものがしぜんにできてくるわけである。けれども、そうしたグループ、党派というものが全体の運営の上で弊害をなす場合が少なくない。特に今"派閥"と呼ばれるものにはその傾向が強い。そういうところから、"派閥解消"ということがさかんにいわれ、いろいろと努力もされているが、そのわりにあまり効果があがらないのが実情のようである。これは結局、派閥をつくるのは人間の本質であり、派閥をなくすことは不可能だからではないだろうか。つまり、派閥というものはなくせるものではなく、その存在をみとめた上で、活用、善用すべきものだと思う」

「その存在をみとめた上で、活用、善用すべきものだと思う」

松下さんは経営者として、この言葉を書いていらっしゃいます。社内に生まれる派閥を解消しようとするのではなく、それが存在することを前提に「和」を生み出すリーダーシップを発揮するのが「指導者の条件」と考えているのです。

もちろん、一社員としては、そのようなリーダーシップを発揮することはできません。しかし、「派閥という存在をみとめる」ことが、会社で働く者の大前提であることに変わりないはずです。

中立派をめざそうが、孤高の存在をめざそうが、まずは、派閥の存在を認めなければならないのです。いえ、派閥の存在を認めたうえで、それにどのように対峙していくかを意識しながら行動しなければ、会社のなかではどのような「生き方」も成立しないと考えるべきなのです。

そもそも、派閥には大きな長所もあります。派閥に入ることによって、上層部とのコネクションもつくりやすくなりますし、部門横断的な人脈も手に入れられるでしょう。上層部や他部署の実情を耳にすることによって、会社全体の状況をより深く理解できるはずです。何か困ったことがあれば、気軽に相談できる人がいろんなポジションにいることは、仕事を進めるうえでも非常に有効です。

著者の高城幸司氏

あるいは、派閥が健全な緊張関係にあれば、派閥間で議論を戦わせることで、より高次な問題解決の方法を生みだすことも期待できます。派閥が互いに牽制し合うことによって、組織全体が極端な方向に走らず、バランスのとれた経営を実現しやすくなるという側面もあるでしょう。

もちろん、派閥同士が足の引っ張り合いをするような、非建設的で敵対的な関係になると大きな問題を引き起こします。しかし、だからといって派閥の存在そのものが「悪」という捉え方をするべきではありません。

問題なのは「派閥」ではなく、「派閥のあり方」なのです。

高城幸司(たかぎ・こうじ)
株式会社セレブレイン代表。1964年生まれ。同志社大学卒業後、リクルート入社。リクルートで6年間連続トップセールスに輝き、「伝説のトップセールスマン」として社内外から注目される。そのセールス手法をまとめた『営業マンは心理学者』(PHP研究所)は、10万部を超えるベストセラーとなった。 その後、情報誌『アントレ』の立ち上げに関わり、事業部長、編集長、転職事業の事業部長などを歴任。2005年、リクルート退社。人事戦略コンサルティング会社「セレブレイン」を創業。企業の人事評価制度の構築・人材育成・人材紹介などの事業を展開している。そのなかで、数多くの会社の社内政治の動向や、そのなかで働く管理職の本音を取材してきた。 『上司につける薬』(講談社)、『新しい管理職のルール』(ダイヤモンド社)、『仕事の9割は世間話』(日経プレミアシリーズ)など著書多数。

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