派閥争いが起きない”独裁体制”は創業者で終わり。その後に備えた「政治戦略」とは?

『社内政治の教科書』第4回
高城 幸司

その結果、親族を社長として、営業系の派閥が幅をきかせる新しい体制が誕生。そこで、やり玉に上がったのが伊藤さんでした。営業系にとって彼女は、元社長の「威光」のもとで無理難題を押し付ける存在だったのです。開発部門のなかでも、やっかみを受けていたため孤立無縁。結局、その会社を退職せざるをえない状況に追い込まれてしまったのです。

私は、独裁的権力をもつ社長とのつながりを強化して、自分の仕事をやりやすくすること自体は間違っていないと思います。むしろ、中小企業で頭角を表すためには、社長の懐に飛び込むくらいの積極性が必要です。

ただし、そこには「落とし穴」があります。社長の庇護のもとに入ると、その「威光」が強すぎて、さまざまな錯覚を起こしてしまうのです。彼女は決して、社長の「威光」をかさに着て、営業部に何かを要求するような仕事の仕方はしていないつもりだったと言います。しかし、問題は相手の目にどう映るかです。誤解を招かないためには、さまざまな勢力に配慮する気遣いが不可欠です。

「独裁社長の引退」を真に受けない

著者の高城幸司氏

水面下に潜る派閥に目をこらす---。そのうえで、それぞれの派閥との距離感を考えます。

基本は、等距離外交です。特定の派閥との距離を近くしてしまうと、万一、独裁社長に「派閥活動」と認識された場合に制裁対象に加えられてしまうおそれもあります。

また、独裁的経営がいつ終わるかはわかりませんから、それまではできるだけ「色」がつかないようにしておいたほうが賢明でしょう。「色」がついてしまえば、いざ政変が起きたときに「取りうる立場」の選択肢を狭めてしまうからです。

派閥活動が活発な会社では、等距離外交の戦略をとりづらいケースもあります。各派閥から勧誘を受けて、「どっちにつくのか、はっきりしろ」といった圧力を受けることもあるからです。しかし、独裁的経営のもとでは、表立った派閥活動はできませんから、そういった圧力を受けることは少ないはずです。各派閥への配慮を示しつつ、できるだけ等距離外交を貫くのが望ましいでしょう。

最後に、もう一点、注意すべきことがあります。それは、「独裁社長の引退」を真に受けない、ということです。これは、ある会社であったエピソードです。

高齢のオーナー独裁社長が、後継人事を敢行。自らは会長に退き、生え抜き役員を社長に据えました。そして、実権を新社長に少しずつ委譲していったのです。

ところが、新社長が社内をある程度掌握すると、会長が敷いた路線とは違う方向へ舵を切る動きを見せ始めました。すると、途端に会長が介入。新社長を解任すると、社長に再び復帰。新社長の側近だった人々も左遷したのです。

よくあるケースです。課長クラスであれば、パージの対象になることはほとんどないでしょうが、目立った言動をしていれば危険です。「"親"新社長派」と見られれば、社内に行き場所がなくなってしまうおそれもあります。

ですから、「独裁社長の引退」には十分に注意すべきです。新社長への支持を明示するのは、権力移行が完全に終わってからにしたほうが賢明でしょう。

高城幸司(たかぎ・こうじ)
株式会社セレブレイン代表。1964年生まれ。同志社大学卒業後、リクルート入社。リクルートで6年間連続トップセールスに輝き、「伝説のトップセールスマン」として社内外から注目される。そのセールス手法をまとめた『営業マンは心理学者』(PHP研究所)は、10万部を超えるベストセラーとなった。 その後、情報誌『アントレ』の立ち上げに関わり、事業部長、編集長、転職事業の事業部長などを歴任。2005年、リクルート退社。人事戦略コンサルティング会社「セレブレイン」を創業。企業の人事評価制度の構築・人材育成・人材紹介などの事業を展開している。そのなかで、数多くの会社の社内政治の動向や、そのなかで働く管理職の本音を取材してきた。 『上司につける薬』(講談社)、『新しい管理職のルール』(ダイヤモンド社)、『仕事の9割は世間話』(日経プレミアシリーズ)など著書多数。

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