派閥争いが起きない”独裁体制”は創業者で終わり。その後に備えた「政治戦略」とは?

『社内政治の教科書』第4回
高城 幸司

あるオーナー経営者にこんな話を聞いたことがあります。

彼は、2代目として社長に就任。創業者は歳の離れたお兄さんでした。優れた技術者だったお兄さんは独裁的経営で会社を引っ張り、大きな成功を収めました。しかし、その成功体験に囚われたために市場の動きを見誤り、会社の業績を悪化させてしまいました。そして、健康上の理由から専務だった弟に社長の座を譲ったのです。

経営方針の大転換が求められていました。そのため、彼は社長就任後すぐに、新しい施策を次々と役員会に提案。しかし、先代の息のかかった役員はすべて反対。影で操っているお兄さんと大喧嘩をする毎日でしたが、ラチがあきません。

そこでやむを得ず、社長権限で反対する役員をすべて解任。彼らを支持する派閥のなかで社内に影響力をもつメンバーも左遷させるという荒療治に打って出ました。同時に、彼が専務時代に水面下でつくっていた派閥のメンバーを重用する人事を強行。その結果、会社業績をV字回復させることに成功したわけですが、「いい思い出とは言えない……」と、いまでも複雑な思いを抱いているようです。

オーナー企業において、これは決して特殊なケースではありません。むしろ、独裁的社長が引退した後には、このような激しい政争が行われるケースのほうが多いでしょう。そして、そこには必ず社員の血が流れるのです。

独裁的経営はいつか終わる---。

このことを、常に忘れてはならないのです。

独裁社長に近づきすぎると、きわめて危ない

そこで、まずやらなければならないことがあります。

水面下で動いている派閥の動きを、ある程度把握することです。派閥の背後にオーナー一族の存在がある場合には、特に注意が必要です。オーナー一族間のパワー・バランスへの洞察を深めておく必要があるでしょう。そして、それぞれの派閥に配慮しながら行動することです。

ところが、これを怠るケースをしばしば見かけます。特に多いのが、独裁社長との距離を近くしすぎて、水面下に潜る派閥への配慮を怠ってしまうケースです。

それで痛い目にあったのが、伊藤さん(仮名、32歳)です。

伊藤さんは、1年前まで、ある中小メーカーで商品開発に従事していました。やる気のあった彼女は、自分のアイデアをオーナー社長に直接売り込むこともありました。独裁的経営者である社長を味方につければ、商品化の可能性が格段に高まるからです。社長肝いりの商品となれば、営業も販売活動に力を入れざるを得ませんから、ヒットする可能性も高まります。

いくつかのヒット商品を生んだことで、社長は若い彼女を課長に抜擢。社長の恩寵を受ける彼女は、まさに「飛ぶ鳥を落とす勢い」でした。

しかし、これが躓きのもととなりました。

社長の強引な手法に不満を募らせていたのは営業系の派閥です。彼らは水面下で、同じく社長への不満をもつ親族と結託して、社長の追い落としを画策。社長の会社資金の私的流用の事実をつかんだ彼らは、クーデターを敢行したのです。

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