いま「安倍政権の暴走」が起きている!
元経産官僚の古賀茂明氏と津田塾大学教授の萱野稔人氏の緊急対談から【後編】

古賀 茂明 プロフィール

良くない政策を広報戦略で良く見せる

萱野: さて、THE PAGEの読者から古賀さんに質問がきています。「安倍政権とメディアの関係について教えてください」。これはタイトルにある「世論操作術」につながってくる話だと思いますが、政権はどれだけメディアに関与できるものなのでしょうか。

古賀: まず、政治家や官僚がメディアと付き合う理由は、政策を自分たちの都合のいいように宣伝してもらうためです。安倍政権に特徴的なのは、安倍さんが自ら、新聞社やテレビ局などメディアのトップたちを押さえにいっているところですね。

萱野: 都合よく報道してもらうために、トップに直接働きかけていると?

古賀: そうです。メディア幹部たちとの夜の会合をはじめ、安倍さんは彼らを公邸に呼んだり携帯電話で連絡をとったりもしていると聞きます。そうやって「あなたたちの報道に常に目を光らせていますよ」と、暗黙の圧力をかけているんでしょう。本来、メディアのトップが総理と近い関係にあるなんて、それだけで世間の信用を失いかねないのですが、むしろ彼らは総理と食事や電話をすることを喜んでいるようです。「安倍さんから電話だ!」と嬉しそうにしているとか(笑)。

萱野: 安倍さんの思惑通りですね(笑)。特に安倍政権と仲がいいメディアは、どこなんでしょう。

古賀: やっぱり読売新聞ですかね。見ている限り、安倍政権について断定的に早い情報を書いたり、安倍さんが喜ぶような記事が多いですよ。日本で一番大きい新聞社である読売が「政府に寄った」記事を書いていることを認識している読者はあまりいないのかもしれませんね。

さらに、安倍政権がスゴイのは、メディアを使ったPRを政策と同じか、あるいはそれよりも重要な課題と位置づけているところです。普通は、どんな政策にするかという議論が中心になるのですが、安倍政権はPR方法を練りながら政策を考えているようなところがある。つまり、政策の内容が多少悪くてもPRで稼ぐという方向性です。しかも、マスコミや官僚から聞く情報では、その戦略に安倍さん自身も深く関っているらしい。

萱野: 「政策をどう宣伝するか」という広報的な戦略にも安倍さんが関与しているんですか?

古賀: そうです。わかりやすいところでは、安倍さんは総理記者会見などでパネルをよく使っていますよね。ああいうものは普通、官僚が作って原稿も考えて、総理はそれを読むだけなのですが、安倍さんは「パネルのこの文字を大きくしたほうがいい」とか、よりよくプレゼンするために積極的に意見しているようです。

萱野: PRの重要性を十分に認識されているということなんですね。

古賀: 専門スタッフが考えた政策の内容をきちんと理解したうえで、効果的なアピール法にまで関与していくのですから、組織のトップとしては理想的かもしれません。ただ、「良くない政策を広報戦略で良く見せる」という程度が非常に強いのが問題なのです。

<安倍さんが掲げてきた「米国に次ぐ世界の仕切り役になる」という基本理念を叶えるための13の政策を、私は「列強になるための13本の矢」と呼んでいます。スタッフが世論の動向や内閣支持率、株価などを注意深く観察しながら、「13本の矢」をどの順番でどう出したら戦争に反対する国民を欺けるか、巧妙なシナリオを作っている。派手な案をぶち上げ、国民の反発があるといったん引き、静かになったら少し違う形で出す、ということを繰り返して、いつの間にか7~8割は達成しているのが、安倍政権のやり方です。こうやって安倍さんは、個々の政策をどうメディアに流すかという戦略だけでなく、メディア企業を取り込んでいく作戦を展開して、それが今のところ奏功しています。>(『国家の暴走~安倍政権の世論操作術』P19~21より)

萱野: とても興味深いお話がたくさん聞けましたが、そろそろ終了の時間が迫ってきました。最後に読者にメッセージをお願いします。

古賀: テレビ局や新聞など、大きなマスコミだけに頼らないでほしいと思います。今はネットも大きな情報源だと思いますが、なるべく偏らず、さまざまの人の意見を聞き、正しい情報を選択してほしいですね。自分の好みの意見や瞬間的な情報だけにとらわれていると、日本の将来に関わる大きな判断ミスがあるかもしれません。

萱野: 「世論操作術」に勝つためには、自分自身で情報を見極める力が必要だということですね。今日はありがとうございました。

<了>

(構成:熊坂麻美)

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萱野稔人(かやの・としひと)
1970年生まれ。愛知県出身。1994年早稲田大学文学部卒業。フリーター生活を経て、1995年からフランスに留学。2003年、パリ第10大学大学院哲学科博士課程修了、哲学博士号取得。東京大学大学院総合文化研究科21世紀COE「共生のための国際哲学交流センター」研究員を経て、現在津田塾大学学芸学部国際関係学科教授。『国家とはなにか』『「生きづらさ」について』『暴力はいけないことだと誰もがいうけれど』『超マクロ展望 世界経済の真実』など著書多数。
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