二宮清純「秋山幸二-工藤公康の“政権交代”を演出した男」

~仕掛け人・根本陸夫かく動けり(後編)~
二宮 清純 プロフィール

気配りを感じた食事会

 根本さんとの思い出について聞くと、こんなエピソードを紹介してくれました。
「僕が入団1年目のことです。寮の選手たちを集めた根本さん主催のすき焼きパーティーが開かれました。すき焼きに牛乳が入っているところがミソでした。

 僕は牛乳入りのすき焼きなんて食べたことないから“いらないです!”と言って箸をつけなかった。すると、同期生からヒジ打ちが入りました。“無理にでも食べろよ”ということですよ。

 実際、彼らは“おいしいです!”とか言って食べている。それくらい根本さんは恐い人だったんです。僕は“ウソつけ”と思っていましたけどね。

 で、2回目のすき焼きパーティー。僕だけステーキなんです。仲間に対しては“ざまぁみろ”と思いましたけど、根本さんは、そこまで気を使っていた。違う意味で“恐ろしい人だな”と思いましたね」

 秋山さんはトレードでしたが、工藤さんはFA権を行使して、1995年、根本さんが代表取締役専務を務めていたダイエーに移籍します。その年、工藤さんは12勝をあげました。そして、その4年後には、MVPに輝く活躍でチームの福岡移転後、初のリーグ優勝、日本一に貢献したのです。

 このように秋山さんから工藤さんへの“政権交代”を見ていると、泉下の根本さんが絵を描いているように見えて仕方ありません。ちなみに「81」は根本さんが西武とダイエーの監督時代に背負っていた番号でもあります。絆の強さを感じずにはいられません。