2013年春、私はニューヨークに渡りました。
ニューヨークは、郊外に行けば「野球の殿堂」があるクーパーズタウン、ハドソン川を渡れば野球発祥の地といわれるホーボーケンがあり、かつてはドジャーズやジャイアンツの本拠地もあったという、野球ゆかりの地です。
以前からフリーのスポーツライターとして日本のプロ野球を取材してきましたが、そのような土地に身を置いて野球というスポーツをより深く理解したいという思いから、ワンシーズンだけ休業し、“野球ファン”としてニューヨークに滞在することにしたのです。
ところが、胸をときめかせながら渡米したのと同じ時期に、ある重大な事件が発生してしまいました。みなさんも記憶にあるかと思いますが、2013年4月15日、ニューヨークの北東にあるマサチューセッツ州ボストンで、市民マラソン大会中に爆弾テロが起こったのです。
この爆弾テロにより、3名の若く尊い命が奪われました。事件による負傷者の数は282名にものぼり、中には手足の切断を余儀なくされた重症者もいたといいます。
15日の事件発生から容疑者逮捕の19日まで、ボストン市内には外出禁止令が敷かれました。この期間、ボストンを本拠地とするボストン・ブルーインズ(NHL)とボストン・セルティックス(NBA)の試合は当然ながら中止となりました。
ボストン・レッドソックス(MLB)が遠征先のクリーブランドから戻ってきたのは19日。本拠地フェンウェイパークではその日の試合は延期となりましたが、容疑者逮捕を受けて20日には再開されました。
この日、スタジアムでは「B STRONG」のロゴが入ったキャップとTシャツが販売され、これらの収益はテロ被害者支援基金「ワン・ファンド・ボストン」を通じてテロ事件の負傷者や遺族に寄付されることに。
また、この日の試合では選手が追悼ユニフォームを着用し、それらはすべてチャリティーオークションにかけられることになりました。試合前に行われた追悼セレモニーでは、テロ事件の際に救助活動に尽力にした人々を、球団とファンがみんなで称えました。