〝認知症〟は国と医者が作り上げた虚構の病だった!「闇」に斬りこむ

介護ライターが見た「希望」とは?
東田 勉 プロフィール

Q 東田さんは、介護ライターを名乗っていらっしゃいますが、医療にも詳しいですね。医療と介護、双方の視点から認知症の問題点を探ったところが、本書の斬新さだと思いますが?

認知症治療の第一人者である河野和彦医師が考案したコウノメソッドを紹介した本格的ガイドブック「新しい認知症ケア医療編」。東田氏が編集、取材、執筆を担当した

東田 2年前に『完全図解 新しい認知症ケア』という大型本の医療編と介護編を2冊同時に刊行しました。編集協力というかたちでライターをさせていただいたのですが、そのときに勉強させられたことが大きいですね。薬の種類や名称、用法・用量などは、徹底して学びました。特に大切なのは、薬の持つ副作用についての知識ですね。認知症のお年寄りが興奮して暴れると、統合失調症の若者に使うような抗精神病薬が使われます。そのときに、この薬を飲むとどうなるか、医者が作用や副作用について家族や介護者にきちんと説明していないのです。家族もまた、医者の処方を盲目的に受け入れて、副作用が出ても最後まで飲ませようとします。さらに悪いのは、副作用を消してほしいと次回の診察時に医者に訴えると、原因となった薬を替えるのではなく別な薬を足されることです。認知症の治療薬は現在4種類ありますが、3種類は興奮系の薬です。しかも、用量を次第に増やしていく決まりになっています。そこで、必然的に起こる興奮を鎮めるために、鎮静させる薬も増量されるのです。いわば、アクセルとブレーキを同時に踏みこむような治療が、標準治療として行われています。それが70歳代、80歳代、90歳代のお年寄りに行われるのですから、常軌を逸していると警鐘を鳴らしたわけです。

「介護のカリスマ」として介護職から絶大な支持を集めている三好春樹氏が推奨する、薬に頼らない認知症ケアのガイドブック。東田氏は、医療編同様に、編集、取材、執筆を担当した。医療編と介護編を同時に編集したことが勉強になったと東田氏は語る

Q 本書には、無知な医者の投薬を受けて死にかけた親を持つ介護家族が何人も登場します。医療過誤から身を守るために、本書に登場してくださった方々の証言は貴重ですね。

東田 介護者家族会の協力を得て、貴重な証言が多数集まりました。特に、近年増えているレビー小体型認知症のお年寄りは、薬剤過敏性があるので標準治療通りに処方すると大変危険です。薬で抑制されると、歩行も嚥下も悪化して寝たきりになり、誤嚥性肺炎を起こして死んでしまうこともあります。証言の中には「この病気は最近増えてきたと言われるが、実際にはレビー小体型認知症の人は昔からいて、気づかれないまま死んでいったのではないか」という意味の発言があり、取材していてゾッとさせられました。

Q そういった薬害から身を守る方法と同時に、本書では環境の調整と関わり方で認知症のお年寄りを落ち着かせてくれる介護施設や病院の取り組みが紹介されています。「闇」ばかりでなく、「希望」も描かれているところがいいですね。

認知症高齢者の介護に悩んでいる読者にはぜひとも読んでもらいたいと、東田氏は語る

東田 本書で紹介できたのは、ほんの一部です。実際には、寝たきりであろうが、認知症であろうが、マヒがあろうが、失語症になろうが、落ち着くどころか生き生きとさせてくれる介護現場は全国にたくさんあります。私の介護ライターとしての本業は、そんないい現場を探し出し、取材に行って良くなった事例を集めることです。介護ライターなんてつまらないだろうと思われがちですが、いい現場を探し当てるたびに感動的な話が聞けるので、こんなに面白い仕事はありません。大切なことは、医療と介護の良し悪しを見分ける目を持つことです。それさえあれば、自分が老いてもどのような助けを求めればよいかがわかるので、決して不幸にはなりません。本書を読んで、そのコツをつかんでいただきたいと思います。

東田勉(ひがしだ つとむ)1952年鹿児島県生まれ。國學院大學文学部国語学科卒業。コピーライターとして制作会社数社に勤務後、フリーライターとなる。2005年7月から2007年9月まで介護雑誌『ほっとくる』の編集を担当。同誌休刊後、フリーの編集者兼ライターとして医療、福祉、介護分野の取材や執筆を行う。著書に『完全図解 介護のしくみ 改訂新版』(三好春樹氏との共著)、『それゆけ!おやじヘルパーズ』(以上、講談社)がある。