現代新書『認知症の「真実」』著者 東田勉氏インタビュー
〝認知症〟は国と医者が作り上げた虚構の病だった!
認知症の「闇」に斬りこんだ介護ライターが見た「希望」とは?

東田 勉 プロフィール
認知症治療薬を服用しても、認知症は完治することはなく、進行を僅かに遅らせる効果しかない。その一方で認知症治療薬には、知られざる重大な副作用があった。

Q 認知症という呼び方は、10年前から始まったのですね。「呼び名の変更が病気への偏見を解消するのに役立った」という意見を新聞で読んだことがあります。政府のキャンペーンというのは、認知症に関する講習会を受講するとオレンジのリストバンドがもらえて、認知症サポーターになれるというものですね。すでに数百万人の認知症サポーターが誕生したと本書に書いてありました。認知症のお年寄りの尊厳を守るうえで、マイルドな呼び名に変わったりサポーターが増えるのは結構なことだと思うのですが、誤解ですか?

東田 誤解です。認知症という造語は、薬害を発生させる温床になりました。原因疾患を特定しないまま、認知症という病名をつけるだけで薬物療法を開始できるようになったからです。薬は、とりあえずアリセプト(ドネペジル塩酸塩)が使われます。すると、ある専門医の経験では約2割のお年寄りが病的に怒りっぽくなるのです。そこで、鎮静させるために向精神薬(抗精神病薬、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠導入薬など)を併用します。そうすると、取り返しがつかないほど悪化させられるお年寄りが少なくないのです。一方、認知症の講習会というのは1時間半程度の安易なもので、「認知症=脳の病気」という観念を刷りこんでいるに過ぎません。認知症は脳の病気であるという考えは、「早期受診、早期診断、早期治療」を呼びかける厚生労働省の執拗なキャンペーンのおかげで、多くの国民に浸透しました。

Q 何のために、そんなキャンペーンを行うのですか?

東田 薬を売りたいからです。あるいは、身内である医者と製薬会社に儲けさせたいからと言ってもいいでしょう。一方で「認知症は脳の病気なのだから治療が必要だ」と言い、一方で「進行を遅らせる薬がある」と言えば、受診者が増えるのは当たり前です。おかげでアリセプトは、2011年には売上高1位の薬になりました。その裏にあるのは、国民の認知症への恐怖心です。行政とマスコミが認知症への恐怖を煽るので、日本は「ボケる」ことを心配する人だらけの国になりました。「ボケる」のだけは嫌だと思う大勢の人々が、自分では予防法に走り、少しでもおかしいと感じる親や配偶者を受診へと追い立てているのです。

Q 安倍首相は先日、主要国認知症サミットの席上で、国の認知症施策を加速させる新たな国家戦略を策定すると表明しました。

東田 その報道だけを見ると、日本はあたかも海外と歩調を合わせているかのようです。しかし、主要7ヵ国(G7)やオランダ、デンマーク、スウェーデンといった認知症対策の先進国に比べると、日本はまったく逆行しています。認知症で薬害を起こしているのは、日本だけだと言っても過言ではないでしょう。抗精神病薬の多剤大量投与が野放しにされているのは日本だけですし、認知症のお年寄りを精神科病院に入院させることも海外ではめったにありません。イタリアでは1998年に精神科病院を全廃して地域で見守る道を選び、フランスやイタリアでは認知症の人を精神科病院に入院させることが基本的に認められていません。海外の先進国は、薬を使い過ぎないように制限していますし、発展途上国でも薬の使い過ぎはありません。膨大に使っている日本では、抗精神病薬を含む向精神薬がどれだけ使われているかを調べたデータすらないのです。そのうえ、精神科病院の病床が世界でも突出して多いので、認知症のお年寄りを薬漬けにする、あるいは閉じ込める医療がまかり通っています。