第4回ゲスト:ドン小西さん (前編)
「デザイナーの仕事は新しい価値を生み出すこと。いくつになってもそれを忘れちゃいけない」

島地 勝彦 プロフィール

ファッションは時代の空気感を反映するものである

ドン で、話してることといえばだいたい、英国紳士がどうとか、イタリアのデザインがどうとか、20世紀のままなんだよ。時代はもうとっくに21世紀なんだぜ、前を向いて、新しいファッションの話をしようよ、と思ったんだけど、30分くらいいたら耐えられなくなって帰ってきちゃった。

島地 ファッションに限らず、60年代や70年代はいろんなものが生まれた時代。万年筆もライカのカメラもも、当時のデッドストックを見るとどれも素晴らしい。使ってみると確かにいい。今の製品のほうが精巧なんだろうけど、一つひとつのモノに味があって、使う人との間に特別な関係ができる。

そういうふうに、20世紀の総決算として昔のモノやスタイルを評価するのはアリだと思うけど、ドンさんが問題視しているのは、今が21世紀だということを忘れて、古き良き時代、自分が安心できるところから出なくなることですよね。

日野 昔の歌謡曲とか、アダルトビデオとか、ぼくは案外好きですけど。

島地 お前は歳のわりにジジくさいから、またちょっと違うな。

ドン 上の層がそんなふうだから、若い世代のデザイナーも「昔のものはいい」と思い込んじゃって、クラシックなデザインばかり描いているのが大勢いますよ。ファッションっていうのは時代の空気感を反映するものでしょう? 21世紀にふさわしい、今まで見たこともないようなものを描かなくちゃいけないのに、いつまでも懐古趣味でどうするんだよ、と言いたい。

馬車から馬を外してエンジンを乗せたことでモータリゼーションが始まったように、奇抜な発想でいままでにないものをつくりたい。デザイナーっていうのは新しい価値を生み出すのが仕事なんだから、いくつになっても、そういう気持ちを忘れちゃいけないと思うんだよね。

島地 同感だね。やっぱりドンさんとはウマが合う。出版の世界でも、紙からウェブへという変化が間違いなく起こっているのに、「紙のほうが上」とウェブ見下してる人もいるよね、特にある程度歳がいった人のなかには。

グーテンベルクが発明した活版印刷技術によって紙の印刷が普及して、ここへきてコンピューターの進化とともに表現の幅が急激に広がったと考えれば、じつに喜ばしいことだと思うんだけどね。紙もウェブも目的にあわせて使っていけば、きっとおもしろいことができるはずだよ。