APECにおける日中首脳会談
~尖閣諸島をめぐる日本の立場の後退が決定的になった~ ほか

佐藤優「インテリジェンスの教室」vol.048 インテリジェンス・レポートより
佐藤 優 プロフィール

分析メモ No.106「再度緊張するウクライナ情勢」

【事実関係】
11月2日、ウクライナ東部の自称「ドネツク人民共和国」、「ルガンスク人民共和国」を実効支配する親露派武装勢力が首長選挙を行った。

<それぞれの現役の指導者を名乗るザハルチェンコ氏とプロトニツキー氏が当選したと発表。プロトニツキー氏の得票率は63.4%。ザハルチェンコ氏の正確な得票率は発表されなかったが68%前後とみられる。

ロシア外務省は3日、選挙について「我々は住民の意思表示を尊重する」とする声明を発表し、結果を承認する考えを示した。欧米はウクライナ政府との停戦合意違反として独自選挙を一斉に批判。メルケル独首相の報道官は、ロシアが選挙結果を認めたことを「理解しがたい」とした。>(11月5日 朝日新聞デジタル)

【コメント】
1.―(1)
ウクライナ東部の内戦については、去る9月5日、ベラルーシの首都ミンスクで中央政府と親露派の間で停戦協定が結ばれた。

1.―(2)
これを受けて、同16日、ウクライナ最高会議(国会)が、同国東部のドネツク、ルガンスクに期限付きで自治権を付与する決議を採択した。

<ウクライナ東部の紛争をめぐり、同国最高会議(議会、定数450)は16日、東部ドネツク、ルガンスク両州の特定地域に、3年間に限って大幅な自治権を付与する法案を賛成多数で可決した。独自の「民警」を持つ権限を与えるほか、12月7日に地方首長や議会の選挙を行うことなどを定めている。同国政権と親露派武装勢力の和平合意に盛り込まれていた東部の「特別な地位」を具体化するもので、親露派が受け入れるかが当面の焦点となる。

法案には他に、(1)地元検察と裁判所の人事への関与(2)ロシア語を使用する権利の尊重(3)ロシアの自治体との関係強化(4)復興に向けた特別措置の導入―といった内容が盛り込まれた。適用範囲となる「特定地域」は2州の州都など親露派の支配領域を指すとみられる。法案には277議員が賛成し、大統領の署名を経て近く発効する見通しだ。

ポロシェンコ氏は、法案の定めた3年間で懸案の地方分権改革を進め、東部情勢の長期的な正常化につなげたい考えだ。ただ、親露派の幹部はあくまでも東部の「独立」を追求する構えを崩しておらず、現状が固定化される懸念も強い。>
(9月17日 MSN産経ニュース)

1.―(3)
要するに、東部2州が中央政府の指揮命令系統に従わない独自の警察を持ち、検察と裁判所の人事に関与し、首長と議会の選挙を行えば、準国家のような存在になる。ロシアのプーチン大統領が提案していた連邦化が事実上、実現することになるはずだった。

2.―(1)
しかし、11月2日に親露派が首長選挙を強行したために、プーチンの計画は頓挫することになった。ウクライナのポロシェンコ大統領が、怒り心頭に発している。

<ウクライナのポロシェンコ大統領は3日、親ロシア派が停戦合意に反して独自選挙を行ったことに反発し、同派が支配する地域の「特別な地位」を定めた法律を廃止する考えを表明した。停戦合意の空洞化が進んでいる。

ポロシェンコ氏は3日夜のテレビ演説で、親ロシア派が2日に実施した独自選挙を「戦車と自動小銃の銃口を向けて、行われた笑劇だ」と批判した。(中略)親ロシア派支配地域では勝手にモスクワ時間が導入され、事実上の「ウクライナからの分離」が着々と進む。親ロ派は繰り返し「独立」を口にし、停戦を利用する形で当初の目的を遂げつつある。

親ロシア派の後ろ盾になっているロシアは、2日の独自選挙について、「全体として組織的に行われ、投票率も高かった」(ロシア外務省)と評価。当選した2人の指導者を住民の代表として認めるようウクライナ政府や欧州連合(EU)に求める考えだ。事実上の独立状態を獲得しつつあるドネツク、ルガンスク両州の現状を固定化する狙いがある。>(11月5日 朝日新聞デジタル)

2.―(2)
親露派が前倒しで首長選挙を実施したのは、この人たちが自称する「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」は、すでに独立しているので、ウクライナの法律に従う必要はないという姿勢を誇示するためだ。

2.―(3)
今回の選挙でカギを握る人物は、「ドネツク人民共和国」のザハルチェンコ“首相”(自称)だ。ザハルチェンコは1976年にドネツクで生まれ、炭鉱労働者(技師)を務めたということ以外、詳しい履歴はわからない。同人はGRU(ロシア軍参謀本部諜報総局)と緊密な協力関係を維持しているものと思われる。・・・・・・以下略

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」vol048(2014年11月12日配信)より