「サードウェーブ」の上陸と「昭和レトロな店」の復活!
カフェ業界で今後生き残る店とは?

鈴木誉志男(株式会社サザコーヒー会長)×高井尚之(『カフェと日本人』著者)
鈴木誉志男, 高井尚之
高井 尚之(たかい・なおゆき)経済ジャーナリスト・経営コンサルタント。1962年名古屋市生まれ。日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を活かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆多数。2007年からカフェ取材も始め、専門誌の連載のほか、放送メディアでも解説を行う。『「解」は己の中にあり』 (講談社)、『なぜ「高くても売れる」のか』 (文藝春秋)、『日本カフェ興亡記』 (日本経済新聞出版社)など著書多数。

高井 それ以外に、コロンビアに直営のサザコーヒー農園もお持ちです。失礼な言い方になってしまいますが、大手ではなく地方の中小チェーンでは珍しいですね。

鈴木 自らの手でも理想のコーヒーを追い求めようと、アンデス山脈の麓にあるポパヤンの近隣の中古農園を買取り、1997年から栽培を始めました。先ほどの条件を満たす土壌や品種にこだわり、生産も効率性を求めずに減農薬で栽培するため病虫害に弱く、17年間で3回全滅しました。コーヒー1本の木からはコーヒー豆が1㎏、ブルボン種やティピカ種は700gしか獲れません。手塩にかけて育てたのに全滅するとガッカリします。

 幸い2014年は良質のコーヒー豆を多く収穫することができ、来年も2~3月の収穫に向けて、今のところ順調です。でも天候にも左右されるので油断はできません。「いいものをどんどん安く」という広告を見かけますが、安くていいものはできないですよ(笑)。

高井 サードウェーブコーヒーも、大量生産や効率性への疑問から生まれてきた面もありますしね。ところでサザコーヒーは、首都圏のJR品川駅や大宮駅の駅ビルにも出店していますが、本店は人口15万人ほどの茨城県ひたちなか市です。JR水戸駅ビルや大洗のリゾートアウトレットモールにも店舗がある。本拠地を茨城県に置くのはなぜですか。

鈴木 サザコーヒーが成長できたのは、茨城県のみなさんに支えられたからです。

 当社は、もともと日立社員だった父が、戦後に経営した映画館「勝田宝塚劇場」内に、私が20代後半で帰郷して喫茶店を開いたのが始まり(現本店の場所)です。2年後に勝田駅前の狭い敷地に4階建ての細長いビルをつくり「且座(さざ)喫茶」を開業しました。89年に建て直した本店にはテラス席もあり、どの部屋からも庭に出られます。

地域における交流を大切にしたい

 本店ではカウンターでのお客さまとの対話も重視し、8メートルの板カウンターで目の前で淹れています。地方なので店は広く、ゆったりした空間に座席数は100席(喫煙席40席、禁煙席60席)ありますが、カウンター席を好む人も多いですね。

 私は、ひたちなか商工会議所会頭もしていますが、周囲に担ぎ出されて就任しただけで、権威主義者ではない。日曜日には、カウンターでコーヒーを淹れて皿洗いもします。妻(サザコーヒー社長の鈴木美知子氏)からは「人のいいコーヒー屋のオヤジ」と言われます(笑)。