「はやぶさ2」の新たな大宇宙航海は人類史上初の「有機物狩り」だ!

『小惑星探査機はやぶさ2の大挑戦』
山根 一眞 プロフィール

帰還カプセルの中には、「イトカワ」で得たおよそ100分の1ミリメートルの微粒子が数千個入っていた。月以外の惑星に探査機を着地させ、その物質を地球へ持ち帰ったのは人類初の快挙で、この4年半、内外の科学者たちによって微粒子の分析が行われ、太陽系の歴史の謎が続々と明らかにされている。

「1969年のアポロ計画で人類は月の石を持ち帰っているじゃないか」と思うかもしれないが、月の石は大きく変質をしており、太陽系誕生当時の情報は失われている。一方、小惑星には、太陽系誕生当時の姿が残っているため、その物質を手にすることが長年待たれていたのである。

それにしても、肉眼で見ることもできない100分の1ミリメートルの微粒子で何がわかるのかと思うが、惑星科学者たちにとってこれは「十分に大きい」。

100分の1ミリメートルというサイズは、細胞のサイズだ。生命科学者たちがその細胞の姿を詳細に描き出してきたように、このサイズであれば太陽系の歴史を読み解くには「十分な大きさ」なのだという。

この微粒子によって、太陽系の惑星が、私たちの地球が、どのようにして作られたのかというシナリオを見出すことが可能なのである。

「はやぶさ」の大航海は、「私たちの地球の出生の秘密」を知ることが目的だったのだ。

私たちには、さらに知りたいことがある。地球上のあらゆる生命、その進化の結果である「私」は、この宇宙でどのように作られたのか、だ。

「はやぶさ2」はいよいよそれに迫る。

つまり、生命の材料であるアミノ酸などの有機物があると推定されている小惑星「1999 JU3」の砂粒を持ち帰ることで、「私」という生命体の材料、その起源を解き明かそうというのだ。

「はやぶさ2」は、「はやぶさ」で7年にわたって培った経験をもとに、こういう人類誕生以来の問い「私とは何か」を解くという壮大な目的をもって旅立つのである。

私は「はやぶさ」の帰還直後から「はやぶさ2」へ向けての挑戦を取材し続けてきたが、その新たな物語を『小惑星探査機はやぶさ2の大挑戦』(講談社ブルーバックス)として近刊予定だ。また、『小惑星探査機はやぶさの大冒険』も改訂版が講談社+α文庫として近々出る。ぜひこの2冊を通して、「はやぶさ」の大宇宙航海をより深く味わっていただきたいと願っている。

(やまね・かずま ノンフィクション作家)
読書人の雑誌「本」2014年11月号より

山根一眞(やまね・かずま)
ノンフィクション作家。1947年、東京都生まれ。獨協大学外国語学部ドイツ語学科卒。現在、獨協大学経済学部で講義を担当。宇宙航空研究開発機構(JAXA)嘱託、福井県文化顧問、理化学研究所相談役、日本生態系協会理事、NPO法人子ども・宇宙・未来の会「KU-MA」理事。NHKキャスターを通算7年、愛知万博では愛知県総合プロデューサーも務めた。本書の前作にあたる『小惑星探査機はやぶさの大冒険』(マガジンハウス)のほか、20冊を超える『メタルカラーの時代』シリーズ(小学館)、『環業革命』(講談社)など著書多数。 ※山根一眞オフィシャルサイト http://www.yamane-office.co.jp/

山根一眞・著
『小惑星探査機「はやぶさ2」の大挑戦』
講談社ブルーバックス/税抜価格:980円

世界が注目する日の丸プロジェクト、その全貌を徹底解説。プロジェクトマネージャー國中均教授はじめ研究者たちが語る開発秘話、驚きのエピソード満載。ベストセラー『小惑星探査機はやぶさの大冒険』著者渾身の科学ドキュメント!
「はやぶさ」で得た貴重な経験をもとに、「はやぶさ2」はいかに進化したのか。目指すは太陽系と生命の起源を解く鍵を握るC型小惑星「1999 JU3」。地球から3億キロメートル離れた小惑星へ総飛行距離52億キロメートル、往復6年にわたる宇宙の旅が始まる。

 ⇒ Amazonはこちら
 ⇒ 楽天ブックスはこちら