ひろゆき 震災の時にはそれができたんです。がれきを片付けてくださいとか、食事の準備してくださいとか。そこで手助けしたいっていう人ができる場所があったんですけど、一通り社会生活ができるようになると、高度な需要になっちゃうんですよね、お金稼いで来い、みたいな。
そうするともう、親切だけどスキルがないっていう人が社会の中で価値を上げることができなくなっちゃったんです。
池上 未だ仮設住宅暮らしを強いられている人たちが多くいるとはいえ、ずいぶん日常が戻ってきましたからね。そうなると、また行き場所を求める必要が出てくるわけで。
ひろゆき そうなると非日常を探してイスラム国へ行く、みたいになっちゃう……。
池上 出てきたのはそういうわけか、と思いますよね。
ひろゆき 社会がどんどん高度化していくので、高度な仕事に就いていけない人は一定数必ず現れて、で、その割合はどんどん増えていくと思うんです。
僕が高校、大学ぐらいの時って、単純作業のバイトというのは結構多かった気がするんですよね。
池上 ありました、ありました。
ひろゆき まあ、荷物の仕分けみたいな、ひたすらベルトコンベアの脇で作業をやるような。でもいまって機械化がそうとう進んじゃったじゃないですか。
そういう意味でここ10年ぐらいの話ではないですかね。単純作業の仕事が機械化されたり、工場の拠点が海外に移っちゃったりして。
池上 経済構造が空洞化して、スリム化したでしょう、会社自体も。そこは経理とか総務機能以外必要なくなっちゃった。
ひろゆき 研究開発とか経営企画とか、まあ、頭のいい人たちだけができる仕事は日本に残して、あとは海外で安くやっちゃえ、みたいな。あとは農業ぐらいしか残らなんじゃないですかねえ。
池上 農業も難しいんですよね。合う人と合わない人がいて。合う人はいいのですが、合わない人は合わないのでたいへんです。
いろいろ取材を続けて話を聞いてみると、みんな夢があって、やりたいことがあって……。IT的というか、壮大な構想があったりするんですけど、じゃあそれをどうやって実現させればいいか、やり方がわからないし誰も教えてくれないし、どうすればいいか。営業ができない、っていうんです。
ひろゆき 探せばネット上にはいろんな手段があるんですけどね。とにかく日本ではいま、プログラムを覚えれば、仕事には絶対困らないんですよ。プログラマだけはいろんな会社で募集しているので。
それに、プログラムってネット上で覚えられるんですよ。いろんな教材もありますし。だからプログラムを覚えれば仕事は見つかるんですけど、あんまりそういう方向にみんな行かないんですよね。最初から「きっと難しいだろう」って思っちゃっているみたいで。
池上 人とのコミュニケーションが苦手でも、非常に天才的な、たとえばゲームとかをパッと作っちゃうような人たちもいるんですけど、でも親も学校も「この子は全然コミュニケーションができないから」といって、まずは「矯正しなければいけない」って。
ある支援の会議に出たとき、問題の事例として取り上げられていたのでよく聞いてみると、「自分はゲームが大好きで、ゲームを作りたいんだ」「実際、作っている」って言うんです。じゃあ「ゲーム会社に入れば?」と伝えても、「いや、(その前に)ちゃんと人間関係を学ばなければならない」と。
ひろゆき もったいない。ウチの会社にもいますけどね。思っていることが口に出ちゃうんですよ、プログラマなんですが。
だから(僕が)こう説明しているときに、「そんなわけねーだろ」みたいなことを、突然言うんです。それは心の声で、(彼は)僕に聞こえているとは思ってないんです。「あー、いや、だからこうだから、やっといて」と言うと、「あ、わかりました」と普通に返してくれるのですが。
池上 でもそれは仕事と合致しているから、うまくいっているんですよね。
ひろゆき プログラムに関しては優秀なんですけど、ただ、「○○をしてください」っていうのを日本語で伝えるコミュニケーションをこちらが頑張らないと伝わらないんです。でも、ちゃんと伝わったら、ちゃんと仕事はきちんとしてくれる。
池上 そういう人なんだ、キャラクターなんだ、という周りの理解があると、やっぱりそこが居場所となり、活躍もできる、ということですね。
ひろゆき 彼はエンジニアとしてすごく優秀で執着心が強く、「これがなぜ動かないんだろう」って思い始めると、突き詰めて調べてくれるんです。
普通の人だと「これ、もうわかんね」って投げ出したり誰かに尋ねたりしちゃうものなのですが、彼の場合、自分で調べて解決するまでやってくれるので、エンジニアとしては優秀なんですよ。
ただ、彼と日本語でコミュニケーションとろうとすると、みんな困るという……。
池上 そういう何か、周囲で気遣ったり工夫しているところってあるんですか。