カンボジアとインドから、子どもが売られない世界をつくる

かものはしプロジェクト代表・村田早耶香氏に聞く
徳 瑠里香 プロフィール

インドでの活動

そこで、かものはしプロジェクトは2012年よりインドにも活動を広げた。インドでは100 万~300万人の女性や子どもが人身売買の被害に遭っていると言われている。

マハラシュトラ州の州都ムンバイで被害に遭っている女性の多くが、ムンバイから1500km程離れたバングラディッシュの国境沿いにある西ベンガル州や、隣国バングラディッシュの出身者だという。貧しい農村地域で、都市部に出稼ぎにでる女性も多く、移動距離が長く人身売買だと摘発し罰することが難しいため、被害が起こりやすい。かものはしプロジェクトでは、このマハラシュトラ州~西ベンガル州といったインドでも最も子どもが売られやすいルートに重きをおき、問題解決に向けたさまざまな調査・それに基づく取り組みを行っている。

「国土も広く人口も多い、地域によって文化も違うインドでは、この問題の規模も大きく解決への道のりは長くなると思います。もちろんカンボジアでの解決策がそのまま適応できるわけではありません。インドには、この問題に対して経験を積んできた力強い団体が多く存在するため、私たちはそういった活動団体と一緒に活動するというやり方をとっています」

支配される少女から自分の人生を歩む女性へ

冒頭のサリナもこの西ベンガル州の出身者だ。サリナが働かされていた売春宿に警察が摘発に入ったとき、サリナは部屋の奥の押入れのようなスペースに隠されたが、同行していたNGOのスタッフが気づき、サリナを救い出した。

その後、サリナは村に戻り、心身ともに傷ついた彼女を心配した母の薦めで、現地のNGOを通して、かものはしが支援する「カーリャプロジェクト」に参加する。同じ立場の女性たちとチームを組んで、グループカウンセリングを受け、罪の意識を取り除き心理回復をし、最終的にはそれぞれが資本金をマイクロビジネスを始めるプロジェクトだ。サリナはこのプロジェクトを通じて、日用品などを販売する小さな商店のオーナーになった。

サリナのお店

「お店は決して今は儲かっていないけれど、彼女にとってはそれ以上の意味があるんです。サリナの『今までは、誰かに命令され従うしか術を持たない支配される人間でした。"人身売買の被害者"から"ビジネスウーマン"になって、自分の人生を自分で決めることができるようになったんです』という言葉には感動したし、勇気をもらいました。彼女は今村のリーダー的存在になって、女性たちに勇気を与える側の人間になっているのです」

またサリナは、自分を売った従妹を訴え裁判で闘っている最中だという。噂を流され村中からの差別の目を向けられたり、家の鶏が殺されるなど家族に対する嫌がらせもあったけれど、同じ立場で闘う仲間と未来への希望を得たサリナは闘うことをやめない。

売春宿からレスキューされた後、サリナのように回復し自立していく支援者たちがいる一方、回復できず命を絶ってしまう被害者も少なくないという。

「彼女たちには、『あなたは悪くないんだ』と認めてくれて、話を聞いてくれて、いい意味でしつこく自分の人生に関わってくる人の存在が必要だと思います。母親でも、NGO職員でもそういう人の存在が彼女たちの人生を変え、支えていくんだと思います。私もかものはしプロジェクトを通して、彼女たちの"人生を取り戻す"お手伝いをしていきたい」

「子どもが売られない世界をつくる」という思いを持って走り出したかものはしプロジェクト。10年以上が経った今もそのミッションがぶれることなく、村田さんは次の10年先の未来を見ている。

「カンボジアでの経験やサリナのような女性たちとの出会いによって、少しずつでも世界は変えられる、変わっていくということを実感しました。インドはまだまだこれからですが、一歩ずつでも子どもが売られない世界へ向けて、闘う少女たちとともに歩んでいこうと思います」

10年先の未来はわからない。けれど、小さな一歩が重なれば世界は少し変わるかもしれない。

かものはしプロジェクトでは、「子どもが売られる問題」についての説明会などのイベントを毎週のように開催している。まずは知ることから、できることが広がっていくかもしれない。たとえば、月々1000円からの寄付会員やカンボジアの女性が手作りしたい草商品の購入など、さまざまな形の支援・参加の方法がある。
詳細はこちらから⇒http://www.kamonohashi-project.net/support/ 

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