カンボジアとインドから、子どもが売られない世界をつくる

かものはしプロジェクト代表・村田早耶香氏に聞く
徳 瑠里香 プロフィール
左から青木健太さん、村田早耶香さん、本木恵介さん

「この問題が根深いのは、子どもたちの将来、人生そのものを奪ってしまうことなんです。16~17歳の少女だけでなく、5歳ほどの幼児さえも被害に遭っています。信じられないけれど、現実です。しかも、身体を売ることになってしまった子どもたちは、汚らわしいと自分を責め、村にも戻っても差別を受け、身体的のみならず精神的にも生涯にわたって大きな傷を負うことになります。最悪の場合、HIV感染によって命が絶たれてしまうことさえあります」

活動の始まりは、村田さんが大学2年時にNGOが主催するスタディツアーで東南アジアを訪れ、施設でHIVに母子感染した5歳の少女と出会ったことだった。少女の母親は貧しく売春宿で働いた後、HIVに感染し亡くなっていたのだ。母子の人生を奪った「児童買春」。村田さんは、事実を知ったその日から、子どもが売られる問題をゼロにするための取組みを重ねている。

貧しさが子どもの将来を奪う

子どもが売春をさせられる問題の元凶は「貧困」にある。農村部を中心とした貧しい家庭に生まれた子どもたちが、家計を支えるために自ら身体を売る、「高給ないい仕事がある」とだまされて売春宿に連れていかれる、家族や親戚によって売られてしまうなどの被害に遭っている。たった1万円(当時のカンボジアの平均年収が約7万円、月収2ヵ月分ほど)で売られた子どもは、1日に何人もの客を相手にし、年間100万円ほど稼ぐこともあるという。でも、そのお金は自分や家族に入っていくことはなく、売春宿のオーナーや密売人の手に渡る。

「活動を始めた2000年当初のカンボジアはもう本当に混沌としていました。例えば、明らかな子どもが男性に連れられてホテルに入っていく姿を見て、おかしいと警備員やホテルの管理人に訴えてもそんなのここでは当たり前のことだという答え返ってくるだけで、誰も気にもとめてなくて。警察も取り締まることはできないし、何からどう手をつけていいのかわかりませんでした」

1970年代~90年代までは、タイを中心にベトナム米兵向けに売春宿が増え続け、子どもが売られる被害が拡大していた。そんななかタイで、国連の後押しもあり、2000年から政府は本格的に子どもが買えないよう法改正と取締りが進められた。タイで子どもが買えなくなったため、その流れは内戦を終えて治安が改善してきたカンボジアにきた。2000年当初のカンボジアでは、人口約1300万人のうち数千人~1万数千人程の子どもたちがその被害に遭っていたと推定されている。

かものはしプロジェクトは現地調査を進めるなか、子どもが売られる問題をなくす第一歩としてカンボジアを活動拠点にした。

子どもを売らせない、買わせない取組み

かものはしプロジェクトはカンボジアで、子どもを「売らせない」、「買わせない」という側面から主に3つの活動を展開している。

一つは、貧しい農村部の大人が仕事し、子どもが教育を受けることができる「コミュニティファクトリー」の経営だ。

かものはしプロジェクトHPより

2008年、シェムリアップ州のソトニコム地区の農村に14人の雇用から始まったコミュニティファクトリーでは、6年目を迎える現在、16歳~40歳の120人を超える女性が働いている。「職場であり、学校」だというこの場所では、仕事を創出するだけでなく、読み書きなどの教育も行われる。い草を使った商品が順調に売り上げを伸ばし、給食や健康診断、託児所などの働き続ける環境が整いつつある今、運営自体も現地のスタッフで行い、経営を黒字にしていくことが今後の課題になっているという。

二つ目は、最貧困エリアにある孤児院を支援すること。カンボジアとタイの国境沿いにあるポイペトという地域には、収入が高いタイに仕事を求めて貧しい人たちが集まってきているという。そこにあるドムノータック孤児院を経済面で支援し、国境沿いで子どもが売られてしまう事態を防いできた。

そして、3つ目が子どもを売らせないための「警察支援」だ。法制度や取締りが整っていない2000年当初のカンボジアでは、警察の汚職・腐敗が横行しており、警察が賄賂を受け取り見て見ぬふりをしたり、売春宿に摘発情報を流し犯罪に加担することもあった。それどころか摘発に関わったNGO職員が脅されたり、被害者が嫌がらせを受けることさえあったという。

買う人がいなくなれば、子どもは売られなくなる。子どもを買う人を逮捕し罰することは、この問題を解決するために最も有効な方法だとも言われている。かものはしプロジェクトでは、カンボジアの内務省や警察、UNICEFやNGOと協力して、警察支援(LEAPプロジェクト)を行ってきた。その下で、警察は法律や逮捕の仕方について座学で得た知識をもとに、実践を踏まえた訓練を重ねた。結果、性的犯罪、人身売買の加害者の逮捕者はこの10年で劇的に増えたという。

そうした流れのなか2008年にカンボジアで新しい反人身売買法が施行され、加害者を摘発し厳しく取り締まることができるようになったため、カンボジアにおける「子どもが売られる問題」は解決の道筋が見えて来ている。

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