『小惑星探査機「はやぶさ2」の大挑戦』前書き公開!

太陽系と生命の起源を探る壮大なミッション
山根 一眞 プロフィール

 地球を出発し、小惑星に着地、サンプルを得て地球に持ち帰ったのは人類初の快挙で、これは日本が小惑星往復とタッチダウンという独自技術を手にしたことを意味しています。「はやぶさ」のチームは、この独自技術を絶やさぬためにも、後継機「はやぶさ2」の計画を進めてきたのです。

 そこで本書では、2010年6月13日から始まった「はやぶさ」帰還後の微粒子の取り出しと分析という科学的な取り組みを紹介したうえで、後継機「はやぶさ2」のプロジェクトを、おもな担当者や企業の証言をもとにわかりやすく描きました。

「はやぶさ」が到達した小惑星「イトカワ」は、観測によって番号がつけられたものだけでも60万を超す小惑星の中では一般的な「S型」です(構成している鉱物がケイ酸塩鉱物からなる小惑星)。しかし「はやぶさ」は、もともとは「C型」の小惑星を目指す計画でした。C型は有機化合物のほか、水も含んでいる可能性がある小惑星です。そこから持ち帰るサンプルには、太陽系の成り立ちのほか、生命の起源を解く がひそんでいると言われています。

 しかし「はやぶさ」は、打ち上げロケットの不具合などからスケジュールが遅れたため、到達可能な小惑星をS型の「イトカワ」にせざるをえなかったという事情がありました。

 そこで、後継機「はやぶさ2」は、「はやぶさ」の本来の目的天体であるC型を目指し、新たな大宇宙航海という大挑戦を開始しました。

 しかし、「はやぶさ2」のような小型の探査機が到達できるC型の小惑星は限られています。やっと見出したターゲットの小惑星は「1999 JU3」(仮称)。2014年冬を中心とした打ち上げを逃すと次のチャンスは数年はないため、チームは限られた時間内で「はやぶさ2」を作り上げねばなりませんでした。

「はやぶさ」「はやぶさ2」を通じて私がインタビューを続けてきたエンジニアや科学者、メーカーの皆さんの言葉を通じて彼らの努力、そして挑戦がどのようなものなのかを理解していただけるでしょう。

 ブルーバックスは科学者が自らの専門分野について書いたものが多いのですが、本書は『小惑星探査機はやぶさの大冒険』同様、宇宙や科学には詳しくない一般の読者の皆さんにも理解できるよう描くことを心した物語、ノンフィクション作品です。本書を通じて「はやぶさ」同様、「はやぶさ2」への思いを抱いていただければと願っています。

 なお、本書では「はやぶさ2」の研究開発の「場」を「JAXA宇宙科学研究所(相模原キャンパス)」と記述していますが、「組織上」は「JAXA 月・惑星探査プログラムグループ(JSPEC)」の所管です。一方、「あかつき」「イカロス」は従来のJAXA宇宙科学研究所の所管と何ともややこしいため、「場」の名称で通したことをお断りしておきます。

 本書の刊行とあわせて、事実関係などの正確を期して加筆訂正した『小惑星探査機はやぶさの大冒険』(講談社+α文庫)を出版しました。本書はそのシームレスな続編ゆえ、2冊を通してお読みいただければ幸甚です。

目次
第1章 脱走した「カプセル」
第2章 手にした「他山の石」
第3章 寅次郎の鞄
第4章 「はやぶさ2」遙かなる旅路
第5章 爆弾搭載計画
第6章 壊れたエンジンの雪辱
第7章 小惑星行きの宅配便
第8章 2020年のウーメラ

著者 山根一眞(やまね・かずま) 
ノンフィクション作家。1947年、東京都生まれ。獨協大学外国語学部ドイツ語学科卒。現在、獨協大学経済学部で講義を担当。宇宙航空研究開発機構(JAXA)嘱託、福井県文化顧問、理化学研究所相談役、日本生態系協会理事、NPO法人子ども・宇宙・未来の会「KU-MA」理事。NHKキャスターを通算7年、愛知万博では愛知県総合プロデューサーも務めた。本書の前作にあたる『小惑星探査機はやぶさの大冒険』(講談社+α文庫)のほか、20冊を超える『メタルカラーの時代』シリーズ(小学館)、『環業革命』(講談社)など著書多数。
『小惑星探査機「はやぶさ2」の大挑戦』
太陽系と生命の起源を探る壮大なミッション

山根一眞=著

発行年月日: 2014/11/13
ページ数: 292
シリーズ通巻番号: B1887

定価:本体  980円(税別)
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(前書きおよび著者情報は初版刊行時点のものです)