『マッサン』人気を引っ張るのはこの男 堤真一が演じる「鴨居の大将」本物はもっと豪快だった! サントリー創業者・鳥井信治郎

週刊現代 プロフィール

高血圧で、冬でもすぐに汗をかくという老人が扇子をつかいながら言った。

「へえ?」

開高(健・編集部注)と私とが顔を見あわせた。

「どんなときでも十人はいましたな」

「十人?女性が……?」

「そうだす」

「……」

しばらくは言葉が出なかった〉

これは鳥井が昭和8年に夫人に先立たれてからの話。しかも一度そういう関係になった相手の生活を一生涯にわたって面倒をみたというから、並の男にできる芸当ではない。「女遊びなんぞ、道楽のうちに入らん」が、彼の口癖だったという。

そんな鳥井について、このドラマで見方が変わったと前出の水島氏が言う。

「私は北海道出身で、だから国産ウイスキーといえばニッカが一番だと疑わずに大人になったんです。私たち北海道人にとってサントリーはライバルであり、鳥井信治郎はしたたかな商人というイメージしかもっていませんでした。

それがドラマを見ているうちに考えが変わりました。鴨居は商売上手ですが、マッサンたちのことを何かと気にかける心優しい人物でしょう。鳥井信治郎も、ただ商売上手なだけの人物ではなかったと思います。人を大切にすることなしに、あれほどの成功を収められるとは思えませんからね」

ドラマでは今後、マッサンが紆余曲折の末に鴨居の下で働き、念願のウイスキーづくりに着手する様が描かれる。だが、史実では日本人の口に合ったウイスキーを目指す鳥井と、あくまでも本場のスコッチウイスキーを志向した竹鶴の意見が衝突し、やがて袂を分かつことになる。

「鳥井信治郎は、世間に通用する商品とはどういうものなのかという本質を理解していた人でした。ワインにしても、ウイスキーにしても、本場の味を再現するのではなく、調合して日本人の舌に合うようにする。日本で作って、日本で売るわけだから、日本人が美味しいと思わないと売れないという明快な論理です。お客様が美味しいと思って飲んでくれるものが『本物』だということなんです。

そこが竹鶴との違いです。彼は本場スコットランドのウイスキーを知ってしまったがゆえに、現地で通用する『本物』でないと許せなかった。それがある意味で、竹鶴の限界でもあったのです」(前出・土屋氏)

ドラマでも今後、この二人のそうした見解の相違が浮き彫りになっていく。それぞれの夢を追う男二人のぶつかり合いから目が離せなくなりそうだ。

「週刊現代」2014年11月15日号より

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