『マッサン』人気を引っ張るのはこの男 堤真一が演じる「鴨居の大将」本物はもっと豪快だった! サントリー創業者・鳥井信治郎

週刊現代 プロフィール

「大阪の山崎に日本初の蒸留所を作ったのですが、建設費用だけで200万円かかったといいます。これは現在の価値に直すと数十億円。しかも、ウイスキーは最低でも5年間寝かせないと商品にならない。莫大な初期投資に加え、5年間は一円の利益にもならない。今考えても、とんでもないギャンブルだったと思います。寿屋の従業員からだけでなく、関西の財界人の中でも『鳥井は頭がおかしくなった』と言われていたんです。

しかし、それでも彼がウイスキーにこだわったのは、日本人が西欧人に劣るはずがないという思いがあったからだと思います」

一度決めたら、やり遂げる。一見、究極のワンマン社長にも見える鳥井信治郎は、その他にも豪快なエピソードに事欠かない。

ドラマで鴨居欣次郎の仕事場がトラの置物で溢れていたことに気づいただろう。じつは鳥井信治郎も大のトラ好きだった。

干支のなかでも強さの象徴であるトラに並々ならぬ思い入れをもったが、鳥井本人の干支は、ウサギである。だが、本人は母親のお腹にいたときはトラ年だったと強弁したという。

鳥井信治郎は、願掛け、神頼みにも熱心だった。ドラマでも、鴨居が金魚鉢を覗き込み「金魚占い」に凝っている様子が描かれる。

冒頭で紹介したシーンでは、マッサンに自分を誘う真意を問われて「金魚のお告げや」ととぼけた返事をするが、実在の鳥井信治郎もまた、占いが好きだった。社員の採用にあたっても「八卦」を用いて、学校の就職担当者に呆れられる始末だったという。

干支や占いといった運を天に任せる傾向がある一方で、商売では時代の先取りに余念がなかった。

大正9(1920)年には、「ウイスタン」なる商品を発売。これは「ウイスキー炭酸」を略したネーミングで、いまでいうハイボールのことだ。当時としてはあまりに斬新すぎたのか、売れなかった。それが現在、大ブームを起こしているのだから、100年先を見通す先見の明があったというべきか。

「甲斐性」の固まり

また、鳥井信治郎は「男の甲斐性」の固まりでもあった。かつてサントリーに勤務した作家の山口瞳は、同社の社史に記している。

〈私は、鳥井信治郎が、女性関係においても豪の者という噂をきいていた。

私たちは、そのことを一番よく知っているだろうと思われる退職社員を訪ねてみた。(中略)

「そら盛大なもんでしたわ」

編集部からのお知らせ!