『マッサン』人気を引っ張るのはこの男 堤真一が演じる「鴨居の大将」本物はもっと豪快だった! サントリー創業者・鳥井信治郎

週刊現代 プロフィール

「そうしよ!」

モデルは諸肌を脱ぎ、日本初となるヌード・ポスターの撮影となった。

この話、史実はこうだ。大正11(1922)年5月、寿屋の宣伝部隊「赤玉楽劇団」のプリマドンナだった松島栄美子を起用して、ヌード・ポスター撮影が大阪市東区の写真館で行われた。当時としては極めて大胆な試みだった。サントリーについていくつもの著作がある経済評論家の片山修氏が解説する。

「鳥井信治郎は『宣伝の鬼』と呼ばれるほど、広告や宣伝に天才的な手腕を発揮しました。大正時代の日本で女性のヌードをポスターに使うなんて誰も考えつきません。一歩間違えば世間からバッシングが起こるし、当局の目も光っている。どこまで肌を露出して大丈夫か、綿密な計算をしながらアイデアを練りに練って、あの大傑作のポスターが生まれたんです」

撮影が終わって、いざ印刷にかける段になっても、ワインの赤色がうまく出ない。何度も何度も刷り直し、ポスター作りの着想を得てから1年後、ようやく鳥井信治郎がうなずいた。

「これや、この色や!」

このポスターは海外からも注目を集め、ドイツの世界ポスター品評会で一等賞に輝いている。

「絶対に社長と呼ぶな」

ドラマではこのヌード・ポスター、他社製の葡萄酒が、発酵が原因で爆発騒ぎを起こし、その煽りを受けて苦境に立たされた「太陽ワイン」の起死回生の一手として描かれている。

爆発騒動が起こったのは事実だが、実際には鳥井にとってこの騒ぎは追い風だったようだ。当時、赤玉ポートワインより人気のあった「蜂印葡萄酒」が爆発したため、鳥井はライバルの落ち目に乗じ、自社製品を大いに売り込んだという。

他社の苦境を見逃さず、一気に攻勢を仕掛ける。鳥井は機を見るに敏な経営者だった。元日本テレビ解説委員で法政大学社会学部教授の水島宏明氏が言う。

「あのバイタリティあふれる鴨居を見ていると、サントリーが日本を代表する酒造メーカーになったのも頷けます。あの時代、古くからある日本酒の酒蔵も含めて、酒造メーカーは群雄割拠していました。

そのなかでサントリーは『赤玉ポートワイン』という洋酒を引っさげて、抜きん出る存在となった。ドラマで描かれる鴨居を見ていると、当時の勢いがよくわかります」

ちなみにドラマに登場する「太陽ワイン」という商品名は史実に関係している。鳥井は赤玉ポートワインをつくったとき、太陽のイメージが湧き、そこから「赤玉」と名づけたという。この太陽のイメージは彼にとって大切なもので、その後、新社名にも使われた。そう、「サントリー」という社名は、太陽(サン)と鳥井をくっつけたものなのだ。

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