「第3のビール」「発泡酒」の大幅値上げ計画が進行中 財務省とビール各社それぞれの思惑

週刊現代 プロフィール

「売れている商品に税をかけてむしり取っていく。これは財務省のいつものやり方です。今回も『またか』というのが率直な感想です。消費者にとってもメーカーにとっても嬉しくないことなのに、そんなことはまったく気にしない。税金をとれればなんでもOKという愚かな増税が断行されようとしているわけです」

ブタは太らせてから食え—財務省内ではそんな不文律もまかり通っているというが、狙われたほうからしてみればたまったものではない。

いまビール業界が最も恐れているのは、「清酒ショックの再来」だ。

国は1943年、激化する太平洋戦争の戦費調達のため、清酒に「特級」「一級」「二級」などの級別課税制度を導入。「特級」と付ければ酒好きの消費者が好んで購入するとの思惑から、特級は一級の倍以上の税額を課した。しかし、それが'90年代に入ると、「税制の簡素化」などを理由に級別制度を完全廃止、税額も統一された。

この税制改正で清酒市場は活性化したかといえば、答えはノー。「ふたを開けて見れば、安くて庶民に人気が高かった二級酒が増税で消費量が減少。清酒市場はこれを機に急降下し、いまや半減するほど急激に縮小している」(清酒メーカーOB)という惨状だった。

そして今回も、消費者の動向より税収確保を優先するような税制改正を断行すれば、ビール業界が同じ道をたどる危険性があるというわけだ。

メーカー同士が腹の探り合い

こうした事態を受けて、「業界全体として、増税ではなくトータルな減税を求めていく」(前出・尾賀氏)とビールメーカーはさっそく反対運動を開始する構え。かつて財務省が発泡酒を増税しようとした際、サントリーが時の首相だった小泉純一郎氏の息子、小泉孝太郎氏をCMに起用するという「奥の手」で牽制したことがあったため、「今回もどこかのメーカーが、安倍総理の夫人昭恵さんをCMに起用するというウルトラCまで語られ始めている」(大手小売チェーン幹部)。

だが実は、今回の税制改正に対してメーカー間には「温度差」があり、一枚岩ではないという事情もある。

というのも、大手ビールメーカー各社のビール、発泡酒、第3のビールの売上比率は大きく異なる。今回の税制改正では、発泡酒と第3のビールが増税される一方で、ビールは減税になる公算が高いため、メーカーによっては税制改正が有利、不利に働くという違いが出てきてしまうのだ。

「最も恩恵を受けるのはアサヒビールです。売上高に占めるビールの比率が7割ほどと圧倒的に高いので、ビール減税のメリットが最も大きい。『スーパードライ』ブランドに頼り過ぎだと批判されてもきましたが、今回はそれがよい方向に効いてくるわけです」(ジャーナリストの永井隆氏)