先々週のコラムで、エボラ出血熱に対する危機管理の必要性を強調したが、まさに、その直後、感染を疑われるケースが東京都内で発生した。7日(金曜日)のことである。リベリアに1ヵ月滞在していたという町田市の男性が、38.9度の高熱を出した。住居近くの診療所で扁桃腺炎と診断されたが、その診療所では外国渡航歴については言わなかったという。
しかし、エボラ出血熱が蔓延している国に滞在した者は、検疫所に毎日の健康状態を知らせることが義務づけられているため、本人がメールで発熱の事実を連絡してきて、それから大騒ぎとなったのである。しかも、自宅で休養していた本人と連絡がしばらく取れず、感染症専門病院への搬送や検体の検査も遅れてしまった。陰性だと判明したのは、翌8日(土曜日)の未明である。
搬送については、私が主張したようにパトカーなど緊急車両の先導があったというが、問題は、本人が検疫所や保健所に届ける前に、一般の診療所に行ってしまったことである。しかも、リベリア滞在歴については告知していない(すれば、診療拒否される可能性が大なので、患者は意図的に伝えないと思う)。
その診療所は、直ちに午後休診の措置をとったというが、診療所の医師や看護師、また、その時に居合わせたほかの患者にも感染する可能性がある。保健所や検疫所にまず連絡して、その指示に従うという基本的ルールを全国民に周知徹底させることが必要である。
さらに、関西新空港着の飛行機に乗っていたギニア人の女性も、発熱のため、検査がおこなわれたが、これも陰性であり、マラリアによる発熱であることが判明した。武蔵村山市にある国立感染症研究センターに検体が送られて、詳細な検査がおこなわれた結果である。関西でも簡単な検査はできるが、武蔵村山まで運んで調べないと、最終決定ができないのである。私が厚労大臣のとき、新型インフルエンザに日本列島も襲われたが、関西から検体を東京まで運んでくるのに時間と手間がかかって閉口したものである。