[ボクシング]
杉浦大介「亀田和毅、アメリカでの未来を考える」

スポーツコミュニケーションズ

ファンを飽きさせないパンチを

 プンルアン戦ではアメリカの関係者を驚かせた和毅だったが、ヘルナンデス戦は勝ちはしたものの、評判は芳しくなかった。特に左目をカットした試合終盤はやや失速。大きな見せ場を作れぬまま終了のゴングを聞き、シカゴのファンから小さいながらもブーイングも浴びる結果となった。

「試合前に(アメリカで)スーパースターになりたいと言っていた亀田は、勝ちはしたが、望んでいたアピールはできなかった。良い選手ではあるが、スーパースター候補のパフォーマンスではなく、それに近くすらなかった」
 ESPN.comのダン・レイフィール記者のそんな記述は、アメリカのメディアの代表的な意見である。

 40戦のキャリアがあるヘルナンデスは経験に裏打ちされた巧さのある選手で、きれいに勝つのが難しいタイプではあった。そんなベテランに、ときに接近戦を挑み、観客を湧かせる意欲を示したことは評価できる。

 ただ、たとえ軽量級でもあのくらいの相手は珍しくはない。容易でない展開の中でも、何らかの形でハイライトをつくる術を見つけていかない限り、これから先もファンを飽きさせてしまうことになりかねない。

 具体的には、何かひとつ売り物になるパンチを見つけ、磨きをかける努力が必要になってくる。和毅の手持ちの中で、可能性があるのは左ボディブローか。

 派手なKOシーンを生み出したプンルアン戦だけでなく、ヘルナンデス戦でも良い角度でボディを叩き、相手の動きを止めるシーンが何度か見られた。とかくパンチが手打ちであることが指摘される和毅だが、腰を入れて打った際のボディブローにはインパクトがある。

長男の興毅もヘイモン傘下となり、アメリカでの試合が続きそうだ。

 今後、機会を見計らった上で、より効果的にこの得意パンチを使うことができるか。年齢を重ねるにつれて身体ができていく中で、最大の長所であるスピードを失わぬまま、他のパンチにも体重を乗せる術を覚えられるか。そのあたりがアメリカで商品価値を高める鍵になるだろう。

 層が厚いとは言えない軽量級でも、和毅がアメリカ国内で抜きん出るためにはもう1、2段はレベルを上げる必要がある。そして、彼にそのポテンシャルがないとは思わない。日本の関係者から、いろいろ聞かされてはきたが、実際にリングサイドから観た和毅は、今後を楽しみにせざるを得ない好素材だった。

 前述したヘイモンとの絡みもあって、アメリカのリングの常連になっていく可能性はすでに現実的。今後、日本人選手としては歴史的な実績を残すことも十分に考えられる。そんなシナリオを実現させる力が実際に備わっているか、これからしばらくは、その動向に注目していきたいところである。

杉浦大介(すぎうら だいすけ)プロフィール>
東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、NFL、ボクシングを 中心に精力的に取材活動を行う。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボールマガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞』など多数の 媒体に記事、コラムを寄稿している。著書に『MLBに挑んだ7人のサムライ』(サンクチュアリ出版)『日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価』(KKベストセラーズ)。
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