起業をするにせよ、事業の再スタートや拡大を図るにせよ、どんな仕事を他人に任せればよいのか、あるいは、どんな業務に即座に取り組めばよいのかまたは延期すればよいのかという判断で悩むことがあるはずです。私の経験から言えば、雇用にはより多くの時間を割くべきです。あなたが雇い入れた人によって、会社の将来の成否が大きく左右されるからです。会社規模がどれほど大きかろうが、この点において変わりはありません。
だからこそあなたは、経営の中枢にいる人材を信頼し必ず太鼓判を押さなければなりません。彼らは、あなたの代役として重要な意思決定をおこなうのですから、当然100パーセント信頼できる人たちでなければならないということを忘れてはいけません。
いま、これを読んで、「けれども自分の会社は大企業だし、採用なんていうつまらない仕事に関わるほどの時間はない。そのために人事部があるんじゃないのか?」と思っているならば、それは考え直すべきです。
私自身、ヴァージン系列会社の、上級管理職のすべての採用決定に関わっています。私と直接会うために、応募者には空路はるばるネッカー島に来てもらうことも時にはあります。(これについては、これまでにほとんど苦情を受けたことがありません!)
年間4千人以上を採用し、4千億ドルの企業価値があるグーグルでさえ、指導的立場を務める人を雇う際の採否の最終判断は、共同創業者でありCEOのラリー・ペイジ自らが必ず担当しています。ラリー本人と直接話したから分かるのですが、象徴的な役割を果たすために採用に時間を割いているのではなく、それが自分の仕事のもっとも重要な部分の1つと位置づけているからです。
さらにグーグルが法人化されたのは大昔ではなく1998年であったことを考えれば、起業後に忙殺される数年間は、創業者であれば誰でも多種多様な役割に対して責任を持たなければならないことを、ラリーとセルゲイ・ブリンは鮮明に覚えているはずです。グーグルが起業する30年前のヴァージン創立時には、私が秘書の仕事からあろうことか会社の経理まで、すべての仕事をこなしていました。
多くの若い起業家と同じく、私が最初に学んだことは、事業を存続させ成長させたいと願うのならば、職責は他人に移譲すべきであるということでした。そして採用する際は、いずれはCEOの職を委ね、自らは自社の次の段階に備えることに集中するために日々の業務から距離を置く日が来ることを念頭に置いて、その判断を下さなければなりません。・・・・・・この続きは『現代ビジネスブレイブ リーダーシップマガジン』vol099(2014年11月4日配信)に収録しています。