「流浪のストライカーの勲章」元日本代表・福田健二

4ヵ国7チームを渡り歩いた男が、来季6年ぶりにJリーグに復帰する
小宮 良之 プロフィール
愛媛・松山のクラブハウス内で取材。子煩悩な2児のパパは、泥臭く闘争心溢れるプレーが持ち味である

 パラグアイでは南米王者を決めるリベルタドーレス杯でゴールを決め、「帰化して代表に入れ」と当時の代表監督に誘われた。メキシコでは標高2500mの高地スタジアムを本拠地とし、肺は一般日本人の約2倍に肥大化した。スペインでは、不調でチームの期待を裏切った韓国代表イ・チョンスの後釜として活躍し、シーズンMVPを獲得。「同じアジア人でも日本人はいい。戦うサムライだ」と地元マスコミに絶賛された。ギリシャではゴール裏からペットボトル、爆竹、はては引きはがされた椅子まで投げつけられ、「プロレスみたいだな」と半ば呆れた。

「精神的にタフになりますよ」と彼は言う。

「自分はFWだからゴールをして契約を勝ち取るしかなかった。日本のFWは、MFやDFに『もっとサイドに開け』『前からプレスを掛けろ』とたくさんの仕事を要求されるけれど、向こうはFWが『オレがゴールしてやるからここによこせ』と主導権を握っている。FWはゴールがすべて。ゴールして初めて仲間から信頼してもらえるし、その繰り返しで自分が成長していると実感できました」

 叩き込んだ数々のゴールが男の勲章だ。

 しかし、福田は今年10月、日本へ戻る決意を固めた。5年半に及ぶ海外でのプレーを一度・断念・することにしたのだ。'09-'10シーズンもギリシャのクラブで迎えるはずだったが、経営問題で給料が4ヵ月未払い、選手総入れ替えの非常事態に陥ったのだと言う。

「そんなトラブルも含めていい経験でした。それでも自分はフランスやUAEへ練習に足を伸ばしたり、海外でのプレーを続けるつもりだった。けれど、チームが決まらずに世界を転々としていては、娘たちが学校にも行けない。それは父親として情けなかった。海外挑戦する前から支えてくれた妻もそうですが、二人の娘は元気をくれる存在。絶対に守らなくちゃいけない」

 数ある選択肢の中から、彼はJ2の愛媛FCへの入団を決意する。最初のオファーは今年の春先。その後、ギリシャのクラブとこじれてから、再び手をさしのべられた。Jリーグ規約で来季までリーグ戦出場は不可だが、その熱意に、彼は胸を打たれた。何より愛媛は、彼が10歳まで過ごした愛着のある土地だ。

「故郷に恩返しをしたいし、愛媛FCとともに成長したいです。6年ぶりの日本でのプレーなんで、外国人選手気分で新鮮ですよ。日本人は技術はあるし、動きも速い。ただ、"怖さ"が足りない。海外の選手は勝負どころが分かるんです。例えば『ここで点を取るぞ』という・メッセージの込もったパス・がある。そのパスで選手全員にスイッチが入り、攻撃に・怖さ・が生まれる。そういったことが僕を通じてチームに伝われば・・・」

 来年は世界中の人々が熱くなるW杯イヤーだ。海の向こうの感覚を肌で知る福田が、3月開幕のリーグ戦で得点を量産すれば代表入りもあり得る。彼は、オシムジャパン時代の'07 年夏、招集は秒読みと言われながら好機をケガで棒に振っている。

この両足で世界を渡り歩いてきた。彼の生き方に憧れて海を渡る若手選手も多い

「代表云々より、今は愛媛のことだけを考えてプレーします。ただ、海外で一緒に戦った選手が代表に入り、強豪チームで活躍する姿は刺激になりますね。サッカー選手はサッカーをしていれば自ずと道は開けてくる。その道がW杯であれ、海外への再挑戦であれ、今は自分を信じてやるだけです」

 流浪のストライカーは日焼けした顔をくしゃくしゃにして笑った。