オックスブリッジの高等教育の強み~考えて、調べて、書いて、論じる「スーパービジョン」

オックスブリッジの学部教育Ⅱ
オックスブリッジ卒業生100人委員会
心理学における聴覚システムについて討論する生徒とスーパーバイザー

③ スーパービジョンの後:再考

スーパーバイザーからフィードバックをもらい、クラスで議論が盛り上がった後は、自分のためになって「よかった」と思う。しかし、時々、「こんな論文は読むこともできない」と突き返される場合もある。その時は落ち込むが、気を取り直して構成・論点を考え直し、書き直した論文を提出する場合もある。あるいは、書き直さずに、試験前に再構成して書く場合もある。ただ、良くない論文をもとにいくら再構成して新たな論文を書いてもあまり良くならないので、そういう意味では、普段から全力を尽くして書くか、突き返された論文をまったく新しい角度で書き直すことになる。年度末の試験で不合格になった場合、追試はなく、退学が待っているという危機感に常にいるため、油断はできない。

多様なスーパービジョン

学年・学部・スーパーバイザーによって、スーパービジョンの形式は多様である。スーパービジョンの日程や論文の締め切りなどを教えてくれる教授もいる。一方、「自分で責任を持ってスーパービジョンを行うこと」が大切だと考えている教授の場合は、論文の提出日とスーパービジョンの日程の調整も自分で行わなければならない。一見、自分の都合の良いように予定を組めるかのようであるが、他教科とのバランスも考えなければ、学期末に複数の教科の論文提出日が重なってしまうこともある。「週末」も「休日」も関係なく課題に取り組む。徹夜の日々が続き体調を崩したり、実家に帰省してから体調を崩したりしたことを振り返ると、体調管理やタイムマネジメントの重要性も学んだのではないかと思う。

学部によって、論文だけでなく、調査をしてからのレポート作成など、課題も方法も多様である。例えば、芸術コースの場合は、作曲や編曲などをしたり、自然科学コースの場合は、実験レポートを書いたり、と様々である。しかし、学部に関係なく、どのような課題であっても、カレッジの友達と共に勉強し、お互い励まし合ったからこそ、頑張れたということが大きい。いずれにしても、真正面からスーパーバイザーと向き合って取り組むクラスである。

こうして、学生は毎回全力を尽くして、修行とも言える鍛錬を積み重ねることになる。そして、さらに、最後の学年末の試験で全力を尽くすのである。

今まで説明してきたスーパービジョンは、基本的には学部生のためのクラスである。院生もスーパービジョンがあるが、1本の論文を何回も教授と話し合い書き上げる。そのため、学部時代より深い専門性と知識が必要となってくる。

日本の学生からみたスーパービジョン

日本の大学でも、演習や論文指導など、一対一で、あるいは少人数で受ける教授の指導はある。日本の学生から、オックスブリッジのスーパービジョンはどのように捉えられているのであろうか。

◇ 持田弥 東大・経済学部生

東大では、 教授と議論を闘わせるということは少ない。 ほとんどのゼミが1学年20人程度の受講生を抱えているから、イギリスほど、発言の機会はない。スーパーバイザー制度があり、議論をする力や論文を書く力はつくと思うが、 毎週、論文を書くことはない。 退学の危機感もない。

成績評価に影響しないスーパービジョンに、学生が一生懸命になっていることには驚きしかない。 就活の際に企業の側から話題になるのは、課外活動や資格であり、大学が就職予備校化している日本と比べると、大きな差がある。でも、選択の余地がない場合、心が折れた人たちにどのようなケアがあるのか…。学生が大学に管理されているのか、専門教育を徹底的に鍛えられているのかはわからないが、放任主義の東大も逆に魅力的かも。

◇ 山田銀河 東大・教育学部生

まさに、大学でしかできないことだと思う。すべての講義でおこなわれているのもすごいことだと言える。日本では卒論で個人指導してもらえるかもしれない。チュートリアル/スーパービジョンのクラスで、教授と少人数グループで話すことは、大講義の時とは違う教授を知ることができる良い機会なのかもしれない。同時に、学問世界の魅力を感じる最高の機会になるかも、と思う。授業に出席させ、課題を増やして学生に勉強させるといった構造レベルの改革ではなく、大学側にも学生側にも、意識改革ができて初めて「勉強している人はカッコイイ」と思えるのかもしれない。

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                                                    オックスブリッジ100人委員会より

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