経済的成功の裏にある苛烈な競争主義---シンガポールにおけるローカルスクールの教育制度

岡村 聡 プロフィール

シンガポールは国を挙げて優秀な生徒にリソースをつぎ込むことが徹底されており、毎年2~4名の優秀な生徒はプレジデント・スカラーとして表彰され、海外の大学であっても奨学金で進学できます。一方、大学卒業後は政府で一定期間、働くことが求められています。つまり、シンガポール政府は幼少期から優秀な生徒を選抜してリソースを注ぎ込み、ゆくゆくはこれらの生徒を行政府に取り込むことで、急激な成長を果たしてきたことがわかるでしょう。

一方、PSLEでAやTのカテゴリに認定された生徒は、NレベルやOレベルの試験を経なければ大学に進学できません。これらの試験でも成績が芳しくなかった場合や、成績が良くとも専門知識の取得を優先した場合は、ポリテクニークと呼ばれる専門学校に進学します。ただ、この専門学校から大学に進学する生徒も一定数おり、シンガポール最高峰のNUS(シンガポール国立大学)を卒業した日本人に話を聞いたところ、こうした生徒のほうが、学習意欲が高く成績もよかったと話していました。

このように、少なからず再チャレンジの機会はありますが、おおむね小学校卒業時のテストスコアでキャリアパスが分かれるシンガポールのローカルスクールの制度はあまりに硬直的だと批判が高まり、近年では徐々に学力以外のスキルも進学に勘案するように変わってきています。

また、学力が優秀な生徒が、リスクを取らずに政府や大企業ばかり向かうことも、今後の経済成長に不可欠な起業家の輩出を妨げるため、小さいころからプレゼンや議論のファシリテーションなどのビジネススキルを学ばせることにも注力しています。シンガポールが豊かになった今、これからの成長を模索するなかで、教育制度がどのように変わっていくのか要注目です。