[サッカー]
大野俊三「アギーレジャパン、ブラジル戦の意義」

スポーツコミュニケーションズ

攻撃に必要なグループ戦術

 攻撃面ではブラジルにあって、日本に足りない要素が明確に見てとれました。それはグループ戦術です。ブラジルは3~4人で局面を打開するグループ戦術を有効に使っていました。たとえば、ネイマールにパスが渡った時、複数の選手がボールをもらおうとパスコースをつくりだしていました。これによりネイマールのプレーの選択肢を増やし、日本守備陣に的を絞らせづらくしたのです。

 90分間を通して全員で遂行するチーム戦術とは別に、局面に応じて選手同士が意識を共有し、グループを形成して攻撃を仕掛ける。日本が世界の強豪と渡り合うためには、ブラジルが見せたようなグループ戦術を確立していかなければなりません。

 さて、ブラジル戦では本田圭佑や長友佑都がスタメンから外れたことで、“なぜベストメンバーを組まなかったのか”との批判が取り沙汰されましたね。私はアギーレ監督がベストメンバーを“組まなかった”というより、“組めなかった”と見ています。というのも、アギーレ監督は8月の就任からまだ3カ月。招集した選手のすべてを把握できていたとは思えません。

 そこでアギーレ監督はブラジル戦でも選手を試すことに徹したのではないでしょうか。今はアギーレ監督が自分のカラーをうまく表現できる人材を絞り込んでいる段階。今後、ザックジャパン時代からのメンバーが主力の多くを占めるのか、それとも新たな顔ぶれになるのか。焦ってメンバーを固定する必要はないと感じますね。

 またブラジル戦で試された選手たちにとっては、経験が大きな財産となったに違いありません。やはり、ベンチから試合を見ている時とピッチ上でプレーする時とでは、感じとるものに大きな差がありますからね。今回、柴崎岳、田口泰士、小林悠らは世界のレベルを肌で体感できたはずです。技術の高さ、スピード、勝負どころの迫力……。ぼろ負けという結果の中で、“これが世界か”という基準を知ることができたでしょう。その意味でも、選手を試せる今の段階で世界最高峰の相手と戦えたことは大きいと思います。

 アギーレジャパンの道のりはまだ始まったばかりです。ここから、どのようにチームの骨格ができ上がっていくのか。ここに注目しながら、11月の2試合(ホンジュラス戦、オーストラリア戦)を見ていきましょう。

<大野俊三(おおの しゅんぞう)プロフィール>
元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アント ラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引 退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザ(http://kashima- hsp.com/)の総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年J リーグベストイレブン、元日本代表。