若者が盛り上げる一次産業と地方移住、その魅力と課題---食べもの付き雑誌『食べる政治』『四国食べる通信』

佐藤 慶一 プロフィール

「地元に誇りを持てることが重要」

まず、農業と音楽で地域を結ぶ、農音の活動が紹介された。2011年に都会から田舎へと移住したバンドマンを中心に結成(今年9月にNPO法人化)。「昼は畑、夜はジャムセッション」というキャッチコピーを掲げ、愛媛県中島と東京の2拠点で、地域活性や柑橘ブランドの復興に取り組む。中島が活動拠点なのは、団体代表の奥さんの祖父母が同島に住んでいたことがきっかけなのだという。

中島のポテンシャルとしては、みかん栽培に適合していたものの、少子高齢化で過疎化などの課題も出てきている。一方、都会で田舎暮らしに憧れをもっている人がなかなか実行に移すことが難しいということもある。この2つの要素をつなぐことで、移住を促進し、都会と地方の双方に良い循環を生み出すことを目指す。

柑橘ブランドの「復興」が意味することは、過疎のほかにも後継者がいないことによる耕作放棄地の問題やイノシシによる獣害も深刻化しているからだ。最近では民家の近くにイノシシが来ることもあり、みかんの畑だけでなく人に危害が加わる可能性も出てきているため、農家が狩猟免許を取得して対応しているそう。

また、今年8月の豪雨による広島市の土砂災害で、中島のみかん畑も崩壊。もう一度畑を再生させるのに何年もかかるとなると、高齢者にとってはなかなか厳しい部分もあるため、若者が再生を担うことができる。隣家の先輩農家などに教えてもらいながら、活動をおこなっているのだという。

佐々木俊尚氏

佐々木氏は「農業はハードル高いので、どのように身に付けるのかというのは難しい問題。別の問題としては、地元の人とどのように仲良くするのか。うまく溶け込めず苦しむ人もいる。ヒッピーのテンダーに聞いたら、2拠点居住からはじめるのが良いとのこと。とりあえず家を借りておいて休みに帰る、ということを2年ほどやっていると溶け込みやすい」と、移住の課題と地方への重心の移し方を紹介した。

続いて、『四国食べる通信』編集長のポン真鍋氏が活動紹介をおこなった。真鍋氏は高知県高松市出身。東京大学大学院を卒業後、外資系大手投資銀行グループに勤務を経て、香川県小豆島を拠点に活動している。「小豆島はオリーブで有名でしたが、そうめんやしょうゆなどほかにも売り出せるものがあると思った。また、少子高齢化といった社会問題が香川県のどの島よりも進んでいた」と、この2面性に興味をもち、地元ではなく小豆島へと足を踏み入れたという。

それからはポン菓子の販売を皮切りに、新鮮な野菜の販売、島の産品をつかった「小豆島のギフト」、老若男女が集まる「島Cafe」などを手がけた。「今年は食がテーマ。地元に誇りを持てることが重要で、その第一歩は『いいね!』と言われること。食は全世界の人が関係するので広まりやすいし、地域と食は密接に紐づいている」と真鍋氏。東北から始まった「食べる通信」のコンセプトを四国にも取り入れ、『四国食べる通信』を立ち上げた。現在、編集長を務めている。