『若者のすべて 1980~86「週刊プレイボーイ」風雲録』より【第3回】 ~第1章 パイレーツ オブ 九段~

「なに、これ?」

「お預かりした5000円の残りです」

俺は母ちゃんからきちっと言われていたのだ。

「5000円なんて大金はちゃんと使うだけ使ったら、お釣りはちゃんと返さなあかんで」

なので、交通費だけ使って、残りは返却したのだ。

中村さんは中身を見た。4000円と小銭が入っていた。

「使ったの、交通費だけね?」

「はい」

「律儀だね」

「どうもです。それで、入稿ってどーやるんですか?」

「まず、写真を並べてみろ」

中村さんは茶色い大型の書類袋からキャビネサイズ(130ミリ×180ミリほどのサイズ)の写真を大量に出し、ライトテーブルの上にガサガサガサーッと広げた。

俺はモノクロ写真をキャビネサイズまで引き伸ばす作業を、自宅で自分でやっていた。1枚仕上げるのにどれだけの時間がかかるかも、知っている。

眼の前には100枚以上あった。現像液の酸っぱい匂いが鼻をつく。

(こんなにたくさん引き伸ばすなよ)

と俺が思っていると、

「じゃ、俺、他の入稿もあっからさ」

と中村さんはどこかに行ってしまった。

マジー? この先どうすればいいか、知らないもんなー。

似た作業といえば、自分で作っていたアクション映画のフィルム編集作業だ。撮ったフィルムを全体の構成を考えて繋ぎなおす。

俺はドキュメント映画『闘う学生プロレス』を作る要領で写真を選び、ライトテーブルの上に並べなおした。ヘルメットをかぶってゲバ棒を持って反体制闘争をしていた少し前の大学生に比べれば、その当時、プロレスで闘う学生は新しい存在だった。

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