『若者のすべて 1980~86「週刊プレイボーイ」風雲録』より【第2回】 ~第1章 パイレーツ オブ 九段~

話を7月26日のスタジオに戻そう。

俺は、初めて見る、壁や天井や床が全面白く塗られたスタジオに感動していた。こんな真っ白な綺麗な空間で雑誌は作られているのだと思い込んだ。

口説いた女子大生の姉ちゃんが、メイクも終えて全裸で登場。

うひゃーひゃひゃといった感動をなんとか隠して、撮影開始。

「コミネ、そこじゃ光が当たらないよ」

とカメラマンからご注意。

なにしろ、マンコを見に来てるんですから、レフ板持ってモデルにちゃんと光を当てようなんて思ってませんから。けど、カメラマンの指示で泣く泣く位置を変える。

そこからじゃ、マンコが見えない。不自然な姿勢でレフ板を持ち続ける。

そんなときにスタジオ入り口の鉄扉がガタンと開いて登場したのが、中村さんだった。

「どぉーおー、調子は?」

スタジオの写真撮影では、大物編集者はわざと遅れてやってくるものだという業界のルールを知らなかった俺は、「おー、この人が雑誌の人なんだー。でも、なんで遅れてやってくんだー?」と思ってました。

だが、雑誌の人に会って話す最初のセリフは決めてました。

「すんません、なんかいいバイトないっすか?」

中村さんはメガネの奥で目玉をギロギロさせて、俺を睨んだ。そしてカメラマンに向くと、ひと言。

「こいつ、なんなの?」

俺は、(なんで?)と自問自答。業界の人だから軽い調子で声をかければナイス第一印象、と思ってました。

あとからわかるんですけど、出版業界の中ではプロカメラマンのアシスタントは、パシリよりも低い立場にいる奴隷。その奴隷が、カメラマンを差しおいて編集者に話しかけるなんぞ、無礼千万なのであります。

でも、カメラマンは優しく答えるのでありました。

「中村さん、この女子大生を口説いて紹介してくれたのがこいつ、コミネなんですよ」

「へぇー、そーなんだ。それでアシスタントしてんの?」

「今日だけの臨時です」

とカメラマン。

俺はとても卑しい愛想笑いをした。