[アジアパラ競技大会]
車いすテニス男子決勝「国枝vs.眞田」、勝敗を分けた“経験値”

スポーツコミュニケーションズ

湿ったボールへの対応で明暗

 しかし、この日の国枝は波に乗り切れなかった。第2セットの1ゲーム目、またもダブルフォルトを2本犯し、いきなりブレークされたのだ。「正直、もうサーブはしたくないと思いましたね」と、さすがの国枝も弱気な言葉を口にした。

 2人がこれだけサーブにミスが多かった原因のひとつは、ボールにあったようだ。眞田によれば、気温が下がったことでボールが湿り、弾まなかったのだという。それが2人のプレーに大きく影響したのだ。国枝も「ラケットとボールとの感覚がずれていて、最後までとまどいはあった」と語った。

 しかし、第2セットの3ゲーム目以降、2人の間に明らかな差が生じ始めた。国枝は、ラケットとボールとの感覚がフィットせず、スピンサーブのかかりがよくなかったため、スライスサーブに切り替えたり、力の入れ具合を調整し、弾まないボールに対して修正をかけた。「最後までとまどいはあった」ものの、徐々にフィットさせていった。

 それに対し、眞田は最後まで対応策を見出すことができず、サーブのみならず、得意のフォアハンドショットまでフレームショットや意図しないところに飛ばすなど、自分のプレーができずに苦しんだ。徐々に、眞田のパワフルなショットは影を潜めていった。経験の差が、勝敗を分ける大きな要素となったのである。

 眞田にとっては、身体のコンディションが万全ではないことも影響していた。9月に痛めた右手首は順調に回復には向かっているものの、まだ痛みは残っているという。水分を含んでかたくなり、飛ばないボールを無理に叩こうとすると、痛みが生じたため、試合の後半は合わせにいったショットが多くなっていかざるを得なかった。結局、第2セットは1ゲームを取るのが精一杯だった。