[アジアパラ競技大会]
車椅子バスケ男子、劇的逆転に導いた残り34秒での戦略

スポーツコミュニケーションズ

流れを変えた香西のドライブ

 ところが、残り40秒のところで、イランにスリーポイントが入り、3点差とされてしまう。ここで、及川HCはタイムをかけた。イランに傾きかけた流れを断ち切るという狙いがあった。そしてこの時、及川HCは残り40秒の戦い方について、選手たちに確認したのである。

「スリーポイントではなく、早めのツーポイントでいこう」
 すると、試合再開して10秒も経たないうちに、香西がドライブでインサイドに切り込み、シュートを決めた。しかも相手ファウルをもらい、バスケットカウントでフリースローを得たのだ。これを香西は確実に決め、65-65。ついに同点に追いついた。

 香西の好プレーに指揮官も驚きを隠せずにいた。
「ツーポイントで、と伝えたら、香西がドライブしてバスケットカウントをとったので、『なるほど、すごいな。よくやるな』と思いましたよ(笑)」

 藤本も「チームに流れを引き寄せたのは、間違いなく香西の力強いドライブに尽きます。彼のマンパワーには感謝したい」とチームメイトを称えた。試合はそのまま延長戦へと持ち込まれた。

 しかし、この時点で流れは完全に日本にあった。残り34秒で追いついた日本と、追いつかれてしまったイランとでは、勢いに差があるのは当然だった。延長戦に入っても確実にシュートを決め、リードを広げていく日本に対し、イランは疲労からか、得意のインサイド攻撃ができずに苦しんだ。

 残り2分からイランはファウルゲームをしかけてくるものの、ファウルをもらっては藤本、香西がフリースローを次々と入れ、その差を広げていく。実は、これは日本の狙い通りの展開だった。

「イランはファウルが多いチームなので、フリースローが勝敗を分けることになるとにらんでいたんです。だから、合宿でもずっと練習してきましたし、今朝もフリースローに時間を割いているんです」

 結局、延長5分間で日本は13本中11本ものフリースローを決め、84-75でイランを退けたのである。試合全体でも日本のフリースローの確率は目標の70%を超える76%で、26点を取っている。1点の積み重ねが、最後に勝利をもたらしたのだ。

「強い姿を見せられると思います」――指揮官の言葉が現実のものとなった瞬間、選手たちはハイタッチで喜びを爆発させた。