[アジアパラ競技大会]
車椅子バスケ男子、劇的逆転に導いた残り34秒での戦略

スポーツコミュニケーションズ

強敵相手に課題を克服

 イランはアジアで最大の強敵と言っても過言ではない。2004年アテネ、08年北京とパラリンピックに出場し、昨年、日本代表に復帰したベテランの森紀之によれば、北京パラリンピックで負けて以降、日本は一度も勝つことができていなかったという。及川HC就任後も、13年に行われた世界選手権予選会で2敗、7月の世界選手権でも負けを喫し、3連敗となっていた。

 だが、実力差があるわけではない。3敗中、2敗は僅差での敗戦。7月の世界選手権では第3Qまでリードしていたのは日本だった。ところが、第4Qで26点もの失点を許し、4点差での逆転負けを喫した。

 この時、日本の課題として浮上したのが、層の薄さだった。どんどん選手を入れ替え、常にフレッシュな状態でプレーするイランに対し、日本は主力がほぼフル出場していた。そのため、最後にスタミナの差が出たのだ。

「全員バスケ」
 及川HCも選手たちも、一様に課題として挙げたのが、これだった。誰が出ても、どんなユニットでもレベルを落とさずに戦うことができること。日本のチーム力アップには、ベンチメンバーの底上げが不可欠だと認識したのである。

 その課題は、この試合で見事にクリアされていた。負けることの許されない大一番のイラン戦に、及川HCは第1Qからどんどんメンバーを入れ替え、第2Qを含めた前半で既に12人全員がコートに立った。これが主力に余力を残した状態で入った第4Qでの追い上げにつながったのだ。前半を終えた時点でのスコアは29-32と、ビハインドはわずか3点。及川HCは十分に手応えを感じていた。

 第3Qは最大9点差と引き離されたが、豊島英、香西が立て続けにゴールを決め、4点差で勝負の第4Qへと突入した。序盤は一進一退の攻防戦となったが、中盤は流れがイランに傾き、最大7点差にまで広がった。しかし、終盤になると相手ファウルで得たフリースローを確実に決めるなどして、じりじりと追い上げる。そして残り2分を切って、藤本怜央、香西のシュートが連続で決まり、1点差とした。