[陸上]
白戸太朗「東京オリンピックで残すもの」

スポーツコミュニケーションズ

 見るだけでなく感じられる機会を!

 近年、情報だけはインターネットのおかげで豊富になった。誰でも即座に世界中の情報を得ることができ、回り道をすることがなくなってきている。海外の名所や名物でさえwebで見て知った気になる。だから「わざわざ海外に行かなくても」という若者が多いといわれている。また、行ったとしてもその情報を確かめるだけだ。書いてある通り、どこが綺麗だとか、どれが美味しいとか。「おいおい、それは旅行ではなくただの確認作業だよ」と言いたくなる。残念ながらスポーツもそれに近いことになっている。マニュアルや情報が出回っているので、それに従って、競技力の向上を図る。しかし、お受験、または何に役立つかを重視し、求める結果が出なければ続けない。さらにマニュアルがあるため、指導者からも離れていく……。

 もちろん勝つためのスポーツも大事だし、向上心を持つことは大切だ。でも、ほとんどの子供にとって、スポーツは人間形成の一環。勝つか負けるかではなく、そのための努力するステップにこそ意味があるはずなのだが、残念ながら何らかの結果を求め、遠回りをしないことが正しいとされる傾向が強い。失敗し、痛い思いや悔しい思いをした中で、上手くいった時にこそ、本当の喜びがある。そんなリアルな体験を自分自身や仲間と共有する機会はスポーツでこそ得やすいはずだ。そして、そのような経験をして育った子供なら、オリンピックで選手が戦うシーンを見た時の感じ方も変わってくると思う。だからこそ、子供たちにそんな機会を与えるべきではないか。

 では、今回の企画でできることは……。たとえば、子供に東京マラソンを経験させるのはいかがだろう。42人の子供たちで1キロずつのリレーし、いかにトップランナーが速いかを実感してもらう。自転車で大会の先導をするというのも悪くない。どれも普通ではできず、それでいて一流選手の実力を肌で感じることができるような企画だ。直接身体を動かさなくても、エイドステーションやフィニッシュで選手の受け入れを手伝うなど、選手の鼓動を生で感じるようなことができる機会もいいだろう。前もって大会のレセプションなどで、選手たちとふれあいがあれば、レース時の見方も変わるかもしれない……。

 などと、いろいろと妄想は膨らむが、どれも決まったものではない。これからまさに実現性を加味しながら決定していくところだ。前例のないことは面白いけれど、その分、労力が要る。だが、スポーツをもっと日本の子供たちに味わってもらえるよう知恵を絞りたい。もちろん読者の皆さんの意見も大歓迎!

 たまにはこんな夢のある議論も悪くない!?

>>東京マラソン レガシープログラム

<白戸太朗(しらと・たろう)プロフィール>
 スポーツナビゲーター&プロトライアスリート。日本人として最初にトライアスロンワールドカップを転戦し、その後はアイアンマン(ロングディスタンス)へ転向、息の長い活動を続ける。近年はアドベンチャーレースへも積極的に参加、世界中を転戦していた。スカイパーフェクTV(J Sports)のレギュラーキャスターをつとめるなど、スポーツを多角的に説くナビゲータとして活躍中。08年11月、トライアスロンを国内に普及、発展させていくための新会社「株式会社アスロニア」の代表取締役に就任。昨年1月に石田淳氏との共著で『挫けない力 逆境に負けないセルフマネジメント術』(清流出版)を出版。
>>白戸太朗オフィシャルサイト
>>株式会社アスロニア ホームページ
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