[虎四ミーティング~限界への挑戦記~]
掛布雅之(野球解説者)<後編>「人知れず苦しんだ“阪神の4番”」

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恩師から受け継いだ長所を伸ばす指導法

二宮: さて、今シーズンは、久々に現場復帰したわけですが、いかがでしたか?
掛布: 自分の息子よりも若い選手が多いので、ある意味、少年野球を指導するような感覚でやっていますね。それこそ、すごくレベルの高い少年野球を教えているんだと。

二宮: 基礎から、わかりやすくということでしょうか?
掛布: はい、おっしゃる通りです。だから、とにかく褒め倒します。あまり叱ることはないですね。

二宮: 掛布さんが若かった頃は、山内一弘さんや中西太さんに厳しく指導されたのでは?
掛布: 確かに練習は厳しかったのですが、ふたりに叱られたという記憶はないんですよ。特に中西さんは悪い部分を直そうとするんじゃなくて、「カケ、いいぞ」と言って、僕のいいところを引っ張り上げてくれたんです。そういう指導が、僕の中に忘れずに残っているんでしょうね。

二宮: 特に今の若い選手は叱られることに慣れていません。
掛布: そういうところはあるかもしれませんね。でも、若い選手の指導というのは面白いですね。彼らはマジメで飲み込みも速い。試合で結果が出ると、本当にいい表情でベンチに帰ってくるんです。そうすると、「もっと前に進んでみよう」という目に変わるんですね。

二宮: 掛布さんが若手を指導するにあたって、心がけていることとは?
掛布: 選手とのコミュニケーションですね。最初はある意味、みんな僕のことを警戒していたと思うんです。「すごくハードルの高い人なんだろうな」と。

二宮: 何と言っても“ミスター・タイガース”ですからね。若手にとっては、雲の上の存在でしょう。
掛布: そうであるならば、僕から選手たちのところまで下りていかなければいけないなと思ったんです。だからなるべく選手ひとりひとりに声をかけるようにしました。僕の方から「おはよう」とあいさつをして、雑談でも何でもいいから話をするようにして……。とにかく選手の中に飛び込んでいこうと。アドバイスにしても、押し付けたりはしません。僕が「こうした方がいい」といくら言っても、選手が納得しなかったら、無理矢理やったところで結果は出ませんからね。だったら、自分がいいと思ったことを一生懸命にやった方がいいわけです。だからアドバイスをしても、選手から「じゃあ、こうしてみます」と言うまでは、僕はやらせないようにしているんです。

二宮: 掛布さんの現役時代と、今の選手とでは何が違いますか?
掛布: 今の若手は、やらされる野球は素晴らしいですよ。こちらがマニュアルさえ渡せば、パッと見て、120%その通りにできるんです。ただ、「何か自分で考えてやってみな」となった時に、すぐに助けを求める目をするんです。僕らの頃は、「やらされる野球」が窮屈で仕方なかった。逆に自由と言われると、どんどん自分で好きなようにやれました。いい悪いはともかく、その辺の違いは顕著に感じますね。