二宮寿朗「素晴らしいピッチがあってこそのスタジアム」

二宮 寿朗

参考にしてほしい日本のノウハウ

 デリケートなピッチを良い状態で維持するには、徹底した管理が求められる。シンガポールは熱帯モンスーン気候にあり、開閉式スタジアムは日照の問題もあって管理は簡単ではないだろう。

 翻って日本の各スタジアムのピッチも近年までいろいろと課題を抱えていたが、技術革新やノウハウの蓄積もあってかなり解消されてきたという印象を受ける。Jリーグの立ち上げ当初、ピッチの状態を問題視された清水エスパルスのホーム、日本平スタジアム(現IAIスタジアム日本平)などは、夏芝と冬芝を混ぜて1年を通して使用できる「オーバーシード」を採用してからは、Jリーグのベストピッチ賞を7度も受賞している(昨年も受賞。7度は最多記録)。

 アジアではいまだにピッチコンディションが良いとは言えないスタジアムが多い。日本代表やJリーグのチームがアウェーに出て凸凹のピッチで戦うとなると、“アウェーの洗礼”という文字がメディアに躍ったりする。

 しかし、ピッチコンディションが悪いことをそのまま放置してしまえば、最高のパフォーマンスを引き出せない。ひいてはアジア全体のレベルアップにもつながらないのでは、と感じてしまう。気候面などの違いからそのままにというわけにはいかないだろうが、蓄積された日本のノウハウが多少なりともアジア諸国の参考になるのではないか。

 シンガポールのナショナルスタジアムは「素晴らしい周辺環境のスタジアム」として認識される一方、残念ながら「ピッチコンディションの悪いスタジアム」と捉えられてしまった。ピッチ以外は最高の環境なのに、肝心なピッチの問題によって評価が下がってしまった。
 とはいえ今回の問題を糧として、シンガポールは「スポーツ都市」の威信に懸けてきっとピッチの改善に取り組むに違いない。
 今度シンガポールを訪れる際は、最高の周辺環境に加えて最高のピッチに出合いたいものである。