二宮寿朗「素晴らしいピッチがあってこそのスタジアム」

二宮 寿朗

目を疑った劣悪なピッチコンディション

 しかし、スタジアムの中に入ってみて驚いた。ブラジル代表の前日練習がラスト15分間公開されたのだが、ピッチの芝が根付いておらず、ボールを蹴ると砂ぼこりが舞っているのだ。スタンドから観戦できる角度も良く、施設自体は中に入っても素晴らしい。だが、劣悪なピッチコンディションはそれまでの感動を興ざめにしてしまうほどのレベルだった。

 実はピッチコンディションの問題は以前から指摘されていたものではある。今年8月、ユベントスとシンガポール選抜の記念試合が開催されたものの、ピッチコンディションの問題からケガの可能性を懸念してユベントスの主力選手が先発を外れている。このこけら落としを皮切りにイベントが頻繁に行なわれた影響もあって、芝がかなり傷んだという。芝を養生できず、根付かない場所に大量の砂がまかれたという一部報道もあった。とはいえ、天然芝と人工芝をミックスさせたピッチがまさかここまでひどいとは思ってもみなかった。

 試合前日の記者会見。ブラジルメディアからは同国代表のドゥンガ監督に対して「ピッチコンディションがかなり悪いが、どう思うか?」という質問が飛んだ。
 ドゥンガは厳しい表情でこう言った。
「砂が多いという印象だ。それに芝は、普通よりも長い。この状況ではパスが難しくなる」
 日本を率いるハビエル・アギーレ監督も同様の質問に対して「シンガポールの方がいい状態にしようとしていることはわかるが、ピッチが最も良い状態となるにはもう少し時間が必要だったのではないだろうか。ちょっと砂が多くて最高のプレーを見せるには少々難しい」と感想を述べている。

 最高の環境なのに、最高のパフォーマンスを引き出せない。
 ファンの目的は「いい試合を見る」こと。せっかく観戦へ行くのに、つまらない試合を見たいとは誰も思わないだろう。いい試合を引き出すには、いいピッチ状態が必要になる。スタジアム周辺の環境面も大切だが、それ以上にピッチも大切だということだ。プレーする選手にとっても、観客にとっても青々としたピッチが、胸を躍らせるのだ。