石川次郎 第3回 「編集長の仕事で重要なのは、どれだけ面白いヤツを編集部に引き込めるかでしょうね」

島地 勝彦 プロフィール

立木 マガジンハウスが偉いのは、独創性のある雑誌を作ろうとするところだね。進取の気性に富んだ出版社だと思うよ。

石川 ぼくが平凡出版社に入って叩き込まれたのは「ほかの出版社で出しているものを絶対に真似するな」という精神でした。どこにもないものをゼロから作って軌道に乗せる、そのことばかり考えていました。

立木 一方、シマジが入社した集英社はどうだったの?

シマジ そんな崇高な理念はまったくなかったね。「売れている雑誌を徹底的に真似しろ。そして背中がみえてきたら命がけで一気に追い越せ」とは教えられなかったけど、「平凡」を真似して「明星」を創刊したようなものでしょう。その「明星」は「平凡」がとっくになくなったいまも健在だ。

「週刊明星」だって「週刊平凡」の後続だよね。これは両誌とも消えたけど。「non-no」だって「an・an」の読者層をターゲットに創刊したんでしょうね。「少年ジャンプ」だって講談社の「少年マガジン」の後続として創刊しているし。売れている雑誌を徹底的に研究して真似してじわじわと追い越していくのが集英社の得意技かもしれないね。

おれが深くかかわった「週刊プレイボーイ」も「平凡パンチ」の大きな背中を追いかけて、真似をしながら試行錯誤しているうちに、たまたま殻を破れたんだろう。いままた苦戦しているらしいけど、そのうち蘇るような予感がしているよ。

セオ どうしてですか?

シマジ おれの直系の遺伝子を継いだタナカ・トモジが「週刊プレイボーイ」の部長として出版部から出戻ったんだよ。あいつなら何かやってくれるはずだ。トモジは「退屈と無知は人生の大罪である」というおれの教えを忘れてはいないだろうからね。

何度もいうけど、出版社というのは編集者の才能で保っているんだ。ジローと木滑さんがいてはじめて「ポパイ」が誕生したようにね。

立木 シマジと同じ吃音のチカダも才能ある編集者じゃないの。あいつは可愛いやつだよ。

シマジ チカダは可愛いやつだね。先日もサロン・ド・シマジにやってきて、十字架がデザインされたクロコダイルの財布を買っていってくれたよ。おれもこうして同じものを愛用している。