「日本の技術」で社会を変える!
エンジニアたちの新興国奮闘記【後編】

海外でビジネスチャンスを広げながら社会にも貢献する日本企業が増えている。    ベトナムで大詰めを迎えつつある、二つの「日本式」プロジェクトを追った。

 海外進出に意欲的な玉田だが、「もともと英語が苦手で、海外で働けるとは思っていなかった」という。20代のときに勤めていた自動車部品の製造会社で、社内の英語教室にまめに出席していたことから上司に目をかけられ、海外赴任が決まった。北アイルランドとルーマニアの工場であわせて4年半を過ごす。

「この経験のおかげで、海外で働くことに抵抗がなくなりました。場所に縛られると制約ができますから、どこにでも行けるほうが有利ですよね」

石油公社ペトロリメックスが運営するガソリンスタンド

 この1年半で、現地カウンターパートの石油公社ペトロリメックスに二重殻タンクを造る技術指導を行い、8本のタンクを製造。今年の8月にはノイバイ空港近くのガソリンスタンドで埋設式を行った。だが、その間はトラブル続きだったという。

 たとえば、技術指導のため日本から技術者を呼んだが、肝心の機材を順調にベトナム国内に搬入することができなかった。結局技術者たちは、何もすることがなく1ヵ月も待ちぼうけをくらったのだ。

カウンターパートのトゥーさんとは戦友のような間柄

 また、ベトナム人の期日に対する感覚の違いにもとまどう。ハノイでのタンク埋設式では国内外から11社のメディアが取材を予定していた。だが、式の日程は決まったものの、工事は一向に進まない。今年の6月から、同社のハノイ事務所に駐在する竹園裕二(45)は言う。

「一週間前までタンクを埋設するための穴もなくて、一体どこに埋めるのだろうという感じでした」

 だがその反響は絶大。注目は玉田工業だけでなく、ペトロリメックスにも集まった。プロジェクト開始当初、同社は二重殻タンクの実効性に対して半信半疑だったが、今は俄然前向きだ。

飲めない酒も飲む

 現在、ベトナムには、日本のように二重殻タンクの使用を義務付ける規制はない。だが、環境を保護することを考えれば、法的な縛りが必要不可欠だ。この9月にはベトナムの政府関係者を日本に招き、省庁との会合や消防法に関する研修を行った。その結果、多くの行政官が法整備に対して前向きになったが、実施となると時間がかかる。その前に一手を打とうと着手したのが、新しい自社工場の建設だ。

 工場の敷地は2.1haで、総投資額は10億円。ここではその製造技術を活かし、圧力容器や水タンクなどを造る。工場は社員食堂も併設している。

「いま、現地スタッフは8名。ベトナム人はとても家族的で毎日一緒にお昼を食べているし、仕事の後もよく飲みに行きます。二日酔いで辛いときもありますが、飲めないお酒を飲んででも、彼らと信頼関係を築くつもりです」

 こう語る玉田は最近、福利厚生の一環で、社内で日本語教室を始めた。