「日本の技術」で社会を変える!
エンジニアたちの新興国奮闘記【前編】

海外でビジネスチャンスを広げながら社会にも貢献する日本企業が増えている。      ベトナムで大詰めを迎えつつある、二つの「日本式」プロジェクトを追った。

目的を達成するための技術力

 プロジェクトには多くの日本企業が関わる。システムのフレームワークを作るのは、公共交通施策のコンサルティングを行う交通総合研究所の佐藤哲也(45)だ。佐藤は元青年海外協力隊員。20代のころ2年半、ザンビアで測量技術の指導などを行った経験もある。日本の技術は世界的に評価されている。今回のシステムも、情報セキュリティの高さとカードの読み取り速度の速さが自慢だ。佐藤は言う。

「日本は、オペレーションを作ることにも優れています。それが、高い技術力に結びついているのです」

車内で切符を切る車掌。運賃は7000ドン(約36円)からと激安

 たとえば、これまでベトナムでは定期券の発行数が管理されておらず、利用者層や乗客数がわからなかった。だが今回のシステムでは、カードをタッチしたときに利用者の乗車場所、時間帯などが記録され、利用頻度を把握することも可能。運行システムや編成を改善し、バス利用を促進させるには、それらの情報が必要だからだ。目的を達成するために培われた高い技術―――これこそが日本の強みだ。こうした「日本式」を学んだ人たちは、その後も日本の技術を選択すると踏んでいる。

設置された日本式のICカードシステム

 実際にシステム構築を担当するのは、現地法人のNTTデータベトナムで働く梅原聡史(32)だ。ベトナム人は、好奇心が強く、最新技術の知識も豊富。そのため、とにかく要望が多い。また、上司の意向などの理由によってその内容が頻繁に変わる。調整には苦労するが、日本のシステム開発力を見せることにはやりがいを感じる。だが、予想外のことでつまずくこともある。

「ベトナムにはICカードを表す言葉がないんです。最初は、その概念を説明するのに苦労しました」

ハノイ市都市交通管理運営センター内にデスクを構える

 交通計画調査などを行う企業、社会システム社の小田崇徳(36)は、公共交通改善の意識を広げようと、地元の大学やベトナムの地方行政機関でプロジェクトの意義を説明して回った。

「ベトナムには路線バスに乗ったことがなく、どういうものかすら知らない人もいます。そんな人たちにバスの説明をするのは、新鮮な経験でした」