「日本の技術」で社会を変える!
エンジニアたちの新興国奮闘記【前編】

海外でビジネスチャンスを広げながら社会にも貢献する日本企業が増えている。      ベトナムで大詰めを迎えつつある、二つの「日本式」プロジェクトを追った。

提供:外務省 www.mofa.go.jp/mofaj/
Text and Photographs by Chihiro Masuho/ COURRiER Japon

JICAが行う「ハノイ公共交通改善プロジェクト」のメンバー。左から佐藤、高木、小田


 ベトナムの首都ハノイに着いた旅行者がまず圧倒されるのが、波のように押し寄せてくるバイクと車の一群だ。しかも経済発展に伴い、その数は飛躍的に増加している。それによって引き起こされる深刻な渋滞や事故の多発を改善しようと、2004年から日本のODA(政府開発援助)による交通問題の改善プロジェクトが行われている。

 その一つである、JICA(国際協力機構)が行う「ハノイ公共交通改善プロジェクト」は、運行計画の整備やサービスの改善によって、バイクや車からバスなどの公共交通へのシフトを促すことを目的としている。

 現在、そのプロジェクトのチームリーダーを務める高木通雅(64)は、日本の開発コンサルタント会社アルメックVPIに所属。ベトナムの交通インフラに関わって約17年のベテランだ。バス利用をより快適にする活動がいくつか行われるなか佳境を迎えているのが、南北32㎞に延びる6番線で、紙の定期券をICカード化するパイロット事業だ。同路線のバス26台にカードの読み取り機が、定期券の発行所41ヵ所に申請用のシステムが導入された。

 高木たちは、ハノイ市の交通関係の組織でシステム構築、運用の技術指導をしながら人材育成にも取り組む。このICカード事業は、形になるまで苦労の連続だった。90年代にEUが同様の支援を行ったが頓挫。負の記憶が残るハノイ市から、事業計画書を何度も突き返された。ベトナムはトップダウンで、コネクションがものをいう社会。どんなに優れた事業でも、上層部から承認されなければ話は進まない。

「一度決定したことが、次の日に覆されるのは日常茶飯事。ベトナム人の同僚に入念に根回しをした後、上層部に直接掛け合うことでプロジェクトを進めてきました」

 現在、ハノイの公共交通は外国資本が乱立状態。同市は08年に5路線の都市鉄道建設の計画を決定し、日本が1、2号線、フランスとアジア開発銀行が共同で3号線を、そして中国が2A号線を建設予定だ。今後、日本が海外でビジネスを展開する上で「システム」を先行して導入すれば他国に大きくリードできる。システムは一度入れてしまうと、変更することが難しいからだ。日本は、バスのICカードと鉄道システムの連携も視野に入れている。